Highly Sensitive Personは感覚遮断で変性意識状態になりやすい | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回はHighly Sensitive Person(敏感すぎる人・繊細すぎる人)に関する研究をとりあげます。Highly Sensitive Personに関する論文を読むのはこれがはじめてなので、基礎知識の習得もかねて全文読みました。

なぜ、Highly Sensitive Personなのかというと、場面緘黙症(選択性緘黙症)のブログや掲示板、ホームページを読んでいると、たまにHighly Sensitive Personに関する話がでてくるからです。

今回はHighly Sensitive Personは感覚遮断によるリラクセーション法で変性意識状態になりやすいという研究です。

なお、Highly Sensitive Person以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒ギフトカードは快楽的な目的で消費されやすい

Jonsson, K., Grim, K., & Kjellgren, A. (2014). Do highly sensitive persons experience more nonordinary states of consciousness during sensory isolation?. Social Behavior & Personality: An International Journal, 42(9), 1495-1506. DOI:10.2224/sbp.2014.42.9.1495.

スウェーデンのカールスタード大学心理学部の研究者達による論文です。

○基礎知識1(HSPとは何ぞや?)

感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity:SPS)という概念があります。中京大学大学院心理学研究科の研究者の文献(船橋, 2011)によると、感覚処理感受性とは「様々な情報を他者より強く深く処理する傾向を指す概念」です。感覚処理感受性は「神経症,恐怖,行動抑制,シャイネスなど」とは違います。実は感覚処理感受性の元になるコンセプトを作ったのはElaine N. Aron(エレイン・N・アーロン)博士ではなく、精神科医のカール・グスタフ・ユングだそうです。ただ、カール・ユング博士は生まれつきの敏感さ(innate sensitiveness)という用語を使用していたようです。しかし、その意味するところが現在でいうところの感覚処理感受性と同じかどうかは私には分かりません。

エレイン・N・アーロン博士が提唱したのはHighly Sensitive Personです。Highly Sensitive Personとは「敏感すぎる人」とも呼ばれますが、その定義は感覚処理感受性が高い人ということになります。Highly Sensitive PersonはHSPと省略されることがあります。後に述べる高感受性者尺度(Highly Sensitive Person Scale:HSPS)を開発したのもアーロン博士です。アーロン博士のホームページが日本語版で閲覧できますから見てみるといいでしょう。セルフテストもできます。URLは本記事最下部の「参考URL」をご覧ください。

あたりまえのことですが、高感受性者尺度(HSPS)とは感覚処理感受性を計測する質問紙のことです。アーロン博士が開発した高感受性者尺度は27項目からなっていました。オリジナルの高感受性者尺度は一次元性を仮定していましたが、後に低感覚閾(low sensory threshold)、易興奮性(ease of excitation)、 美的感受性(aesthetic sensitivity)の3因子の存在が示唆されるなど、研究者によって見解が分かれています。このあたりは中京大学の船橋亜希さんによる論文(船橋, 2013)が詳しいです。
ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (ソフトバンク文庫)
なお、高感受性者尺度の開発は1997年だとされていますが、アーロン博士著の『The Highly Sensitive Person』の出版年も1997年です。『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』は2000年に講談社から出版された邦訳本です。実は翻訳版にはもう1つあって、Amazon画像は2008年にソフトバンククリエイティブ社から出版されたソフトバンク文庫の方になります。

○基礎知識2(フローテーションタンク療法とは何ぞや?)

フローテーションタンク療法(Flotation tank therapy)というものがあります。フローテーションタンク療法とは光や音などの感覚刺激を遮断し、リラックスするリラクセーション法のことです。フローテーションタンク療法はフローテーション-REST(flotation-REST)とも呼ばれています。RESTはRestricted Environmental Stimulation Techniqueの略で、限局環境刺激法と訳されます。フローテーションタンク療法は不安やうつ、ストレスの低減や楽観主義・睡眠の質の向上に効果があるとされています。慢性疼痛やバーンアウト症候群にも効果があるといわれています。フローテーションタンク療法でマインドフルネスの状態が生まれるとも考えられています。中には幽体離脱を経験する人もいるようです。

*マインドフルネスについては以前の記事である「マインドフルネスのネット版で不安障害を治療」を参考のこと。また、フローテーションタンク療法は日本でも行われているようで、日本フローテーションタンク協会(Japan FlotationTank Association:JFTA)というものが仮称ながら存在します。

フローテーションタンク療法の方法は音と光を遮断し、水を入れたタンクにあおむけに寝ることです。このタンクに入れる水はただの水ではなく、エプソム塩(エプソムソルト・硫酸塩マグネシウム)を溶かした水を入れます。エプソム塩は硫酸とマグネシウムで構成される塩ですから、浮力が高くなります。なので、塩分濃度が高い死海のようにプカプカと浮くことが可能です。これにより無重力の感覚を得ることができます。つまり、感覚遮断をすると同時に無重力状態にもなるというわけです。

*厳密にいうと無重力は微小重力と書く方が正確ですし、宇宙飛行士が参加した心理学や神経生理学の論文でもmicrogravity(微小重力)という名称が使用されています。これは宇宙に行っても重力が完全にはなくならないためです。しかし、ここでは分かりやすさのためあえて無重力と表記しました。

なお、フローテーションタンク療法で用いるタンクは感覚遮断タンク(フローテーションタンク・アイソレーションタンク・フローティングタンク)と呼ばれています。アメリカの脳科学者、ジョン・カニンガム・リリー博士が感覚遮断タンクを開発しました。リリー博士はイルカとのコミュニケーションを研究したことでも知られています。

○方法

前置きが長くなりましたが、実験方法の説明に入ります。

被験者は56人の心理学専攻の大学生(男性19人、女性37人)。平均年齢は31.93歳(SD=12.44:範囲19~63歳)。被験者は感覚処理感受性の高さにより鈍感な群(36人)と敏感な群(20人)に分けられました(年齢は群間に有意差なし)。群分けは高感受性者尺度得点によりました。ただし、鈍感群で男性より女性の方が感覚処理感受性が高くなりました(敏感群では性差なし)。また、敏感群(HSP群)では男性より女性の方が多くなりましたが、鈍感群では男女の人数に有意差はありませんでした。

フローテーションタンクの水温は皮膚温度と同じくらいの35°Cを維持。フローテーションタンク療法は45分間。

標準状態逸脱経験(Experienced Deviation from Normal State:EDNS)質問紙でフローテーションタンク療法中の変性意識状態(altered states of consciousness:ASC)を計測。変性意識状態とは通常の覚醒意識とは異なる状態を指す言葉です。瞑想や催眠、白日夢、金縛り、体外離脱等で変性意識状態が生じます。

その他、先週の不安・抑うつ、属性的楽観性(dispositional optimism)、神秘体験、没入感特性(没入性・没頭感・没頭性・忘我性)、感覚処理感受性を以下の質問紙で評価。

・用いた質問紙群:病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety Depression Scale:HADS)、楽観性尺度(Life Orientation Test:LOT)、神秘体験尺度(Mystical Experience Scale:MES)、テレヘン没入尺度(Tellegen Absorption Scale:TAS)、高感受性者尺度。標準状態逸脱経験(EDNS)質問紙のみフローテーションタンク療法の終了後に回答し、残りはフローテーションタンク療法の前に回答。

○結果

鈍感群と比較して、HSP群は不安、没入感、神秘体験を強く経験していました(Cohenの効果量は中程度)。また、フローテーションタンク療法中の変性意識状態でもHSP群の方が強くなりました(鈍感群との比較)。

○引用文献&参考文献
船橋亜希(2011). 日本語版Highly Sensitive Person尺度作成の試み : 信頼性および妥当性の検討 日本パーソナリティ心理学会大会発表論文集, 20, 138.

船橋亜希(2013). 成人用感覚感受性尺度作成の試み 中京大学心理学研究科・心理学部紀要, 12(2), 29-36.

○参考URL(2014年12月8日現在)
The Highly Sensitive Person(HSP)日本語版HP(日本語版HP作成・運営は久保言史氏による)
http://homepage3.nifty.com/hspjapanese-k/index.html

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ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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