緘黙高校生の進路・将来を心配する教員は11% | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

神戸国際大学の成瀬智仁さんが公立高校の教員に対して緘黙に関する意識調査を実施しました。この研究成果は2014年11月7日~9日に神戸国際会議場(開催校は神戸大学)で行われた日本教育心理学会第56回総会でポスター発表されました。日本の高校の教職員に緘黙への意識を調査した研究はこれが初めてかもしれません。

成瀬智仁(2014). 緘黙生徒に対する高校教員の指導意識について -緘黙についての理解と指導意識の類型- 日本教育心理学会第56回総会発表論文集, 301.

○方法

公立高校教員15名に対して緘黙生徒の認知調査を実施(予備調査)。予備調査の期間は2010年10~11月で、質問紙の配布を行った本調査は2011年2月~3月に実施。

協力者は公立共学校、私学男子校、私学共学校の高等学校教員124名(男性91名、女性33名)。平均年齢は40.5歳(標準誤差は11.69歳)。年齢の内訳は20代が19名、30代が26名、40代が30名、50代が49名。

調査内容は緘黙についての知識や緘黙生徒に対する指導意識、緘黙指導の体制。

○結果

「進路や将来を心配する」は「そう思う」、「やや思う」合わせて11.0%(以下同様)。「心配でかかわる」は24.5%、「消極的だが問題はない」は47.1%、「安定した性格で心配しない」は69.8%、「不安で悩んでいる」は20.1%、「大人しい個性」は24.3%でした。

緘黙生徒の指導に関しては「必要なら話すので待つ」が24.3%、「声を出そうと励ます」が51.2%、「説諭・注意・叱責」が65.3%でした。

「緘黙の知識」がない教員ほど「将来を心配する」とは「思わない」、「大人しい個性」とは「思わない」でした。教員経験年数が長いほど「説諭・注意・叱責する」、「声を出そうと励ます」といった指導法がとられました(またはそういう指導をすると考えていました)。「緘黙生徒の理解が困難」であるほど「進路や将来を心配」していませんでした。

指導意識の類型を主成分分析ではじきだしました。その結果、「安定した大人しい性格」と「積極的指導」の2成分が得られました。

心理学のためのデータ解析テクニカルブック*主成分分析とはデータを圧縮する時に用いられる統計的分析手法のことです。以下のクラスター分析についてもあらかじめ説明しておきます。私の手元にある『森敏昭・吉田寿夫(編著)(1990). 心理学のためのデータ解析テクニカルブック 北大路書房』によると、クラスター分析とは「似たもの同士を集める分析」(p.289)のことです。

また、クラスター分析の結果、緘黙生徒への指導意識には「放置型」「困惑型」「介入型」「見守り型」の4つのクラスターがあることが判明しました。20代で「放置型」、30代で「介入型」 、50代で「困惑型」と「見守り型」が多くなりました。

○コメント

ほとんど原文をコピペしただけのような書き方になってしまいました。ゴメンナサイ。

「緘黙の知識」がない教員ほど「将来を心配する」とは思わないのは直感的に分かりますが、「大人しい個性」とは思わないとはどういうことなのでしょうか?緘黙を知らない高校の教員は緘黙を個性と認識せずに、どのような理解の仕方をしているのか気になります。

教員経験年数が長いほど「説諭・注意・叱責する」、「声を出そうと励ます」とあります。しかし、本当にそうかどうかは分かりません。というのも教員経験年数が長いほど年齢が高い可能性があるからです。したがって、教員経験年数そのものではなく、先生の年齢(年代)が影響している可能性があります。

高校教員に緘黙の認知度調査を実施した日本の研究は私の知る限りありません。公立小学校の一般教諭・養護教諭(杉森・石原, 2011)公立中学校の一般教諭(成田・斉藤、2012)に関しては場面緘黙症(選択性緘黙)に関する認知度調査が行われたことがあります。しかし、私の知る限り、日本の高校教員への緘黙の認知度調査はこれまでありませんでした。ただ、今回の研究ではリンク先の研究と違って、高校教員の緘黙の認知割合が不明なので、厳密には認知度調査と言えません。しかし、日本で高校教師に緘黙の意識調査をしたのはこれが初めてなのかもしれません。

場面緘黙の当事者団体に所属する場面緘黙経験者への質問紙調査・インタビュー調査(広瀬, 2012)では、20.9%の場面緘黙経験者が教師が緘黙を問題視していなかったと感じていました。これは、緘黙生徒の「進路や将来を心配する」高校教師が1割、「心配でかかわる」高校教師が2割5分だという本研究結果と符合します。もしかしたら、場面緘黙症の当事者は先生の心配レベルをある程度推測できるかもしれませんね。ただし、今回の研究は高校教師に限定されている一方で、リンク先の研究(広瀬, 2012)は高校に限定しているわけではありませんから、単純に比較することは困難です。

また単純比較になってしまうので、注意していただきたいのですが、公立小学校の一般教諭・養護教諭の95%以上が場面緘黙症を知っていたとしても、支援方法を知っている割合は40.9%という調査結果(杉森・石原, 2011)があります。小学校でさえ場面緘黙症の支援方法を知っている教職員は40.9%なのですから、高校だとどういう値になるのか恐ろしい限りです(もっとも、緘黙高校生に対する支援方法が確立しているかがそもそも疑問なのですが…)。

なお、本研究では場面緘黙症(選択性緘黙症)という用語を一切使わず、単に緘黙とだけ表記されています。

○発表者について

本研究を行った成瀬智仁さんは神戸国際大学の方です。しかし、ダイヤモンド社のダイヤモンド・オンライン掲載の『「引きこもり」するオトナたち 大人しい優等生タイプを社会に出てから苦しめる “大人の緘黙(かんもく)症”のリアル(池上正樹)』においては臨床心理士で関西外国語大学・国際言語学部学生相談室の成瀬智仁講師と紹介されています。また、以下の文献にも成瀬智仁さんのお名前がありますが、同姓同名の別人かどうかは私には分かりません。事実、以下の文献では2つとも成瀬智仁さんの肩書が大阪府立西寝屋川高等学校となっており、私にはまったく事情が分かりません。

小林重雄・浜田貴照・菱田勝・成瀬智仁・藤宮由佳・園山繁樹(2007). VI-1 日本における緘黙症治療の実態 行動療法又は認知行動療法的アプローチへの期待 日本行動療法学会大会発表論文集, 33, 96.

浜田貴照・藤田継道・早崎美香・成瀬智仁・田端康治・園山繁樹(2008). 体験者が語る緘黙症の指導体制を巡る日本の実情(準備委員会企画シンポジウム7,日本特殊教育学会第45回大会シンポジウム報告) 特殊教育学研究, 45(5), 299-301.

○参考URL(2014年12月4日現在)
成瀬智仁(2014). 緘黙生徒に対する高校教員の指導意識について -緘黙についての理解と指導意識の類型- 日本教育心理学会第56回総会発表論文集, 301.
http://www.e-yoshimi.jp/56soukai/ronbunshu/PB048.pdf

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Comment
167
紹介
日本語の起源

言霊百神

kototama 100 deities

168
Re: 紹介
宣伝ですね(笑)

検索はしてみましたが、宣伝コメントだけでは何かの罠かと警戒する性質なので、サイトへの訪問はしませんでした。

171
コメントありがとうございます
来てないみたいです。少なくとも、2014年12月8日の記録にはありませんでした。お気遣いはありがたいのですが、私個人としてはこれぐらいならまだ許容範囲内であります(防御が甘いと思われるかもしれませんが)。

○削除の件について

コメントの一部だけを削除するのは無理、もしくは方法があったとしても私は知らないので、コメント全部を削除しますね。

*もしご要望があれば、この私の返答コメントも削除します。

172
ありがとうございます。
そういえば、FC2は書き込んだ本人が後から書き換えられる仕様でしたね。

私もこの程度ならあまり気にしてません。
というより、ここのIPがわかれば今後対処しやすいので知りたかったんですよ。
ねちっこくて1か月に1000回くらい至る所でやってるので目障りで。

最近もどなたか追い出されたみたいですけど。
ここ2、3か月で数人追い出されてるかな。別のところも含めると。
まあ同一犯とは限りませんが。

173
Re: タイトルなし
たしか、FC2ブログはパスワードを設定しないとコメントの編集ができなかったような感じがします。

実は今回の件で他人のIPアドレスの情報を勝手に漏らすのはいかがなものかと考えました(IPだけで個人情報が分かることはないみたいですけど)。しかし、特定のIPがきているかどうかというYes/Noで回答できる質問でしたので、少なくともあのコメントがきた日にはNoと答えた次第です。

174
承知いたしました。
おそらくそのようなご回答が返ってくるだろうなとも思っていましたので、それで構いません。

お手数おかけしました。(^^ゞ

175
心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究でも
荒らし?のようなコメントが別のブログ『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』の「父親の学歴や親の収入が高いと子供は美女・美男子になりやすい」という記事にもきました。

参考⇒http://neuropsychology.seesaa.net/article/412719096.html?reload=2015-01-30T08:16:11

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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