社会不安障害と脳波 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »   神経科学  »  社会不安障害と脳波

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

認知行動療法が社会不安障害の人の脳波を変化させたとする研究(Miskovic et al., 2011)が発表されたので、それに関わる論文をここでご紹介しようと思います。

Davidson, R. J., Marshall, J. R., Tomarken, A. J., & Henriques, J. B.(2000). While a phobic waits: Regional brain electrical and autonomic activity in social phobics during anticipation of public speaking. Biological Psychiatry, 47, 85-95.

★概要

社会不安障害の人と精神疾患がない対照群で、脳波や心拍数、血圧などを計測し、比較した研究です。ただ、測定と言っても、スピーチに関する指示がない時(ベースライン)や聴衆の前でスピーチをするよう指示があったがまだ行っていない時(予期条件)などの条件を設けているので注意が必要です。

その結果、社会不安障害の人は対照群と比べて、予期条件では相対的にα1波(8-10Hz)という脳波が減少していることが示されました。α1波は側頭葉前部と外側前頭葉で有意に減少していました。社会不安障害の人では右半球の方が大きくα1波が減少しており、対照群では逆に左半球の方が減少していました。α1波はリラックス・安静状態にある時に現れる脳波です。それが減少したということは脳の活動が活発になったと解釈できます。

★コメント

この研究ではα1波以外にも、社会不安障害の人のβ2波(20-30Hz)についても調べています。β2波では、スピーチを告知した後に右半球の方が優位になりましたが、対照群では左半球の方が優位となりました。著者はこの点について考察していないのですが、α1波の挙動とは真逆です。この結果も脳活動が優位となる左右の両半球が社会不安障害であるかによって異なることを示していると考えられます。

一般に、負の情動(不安など)に伴い右半球が活発になることは広く認められています。この研究結果は、社会不安障害の人は不安を感じて右半球が活発になったことを反映していると思われます。

論文の第1著者はリチャード・デビッドソン博士です。博士は、以前「行動抑制」という記事で紹介した「社会不安障害とシャイネス―発達心理学と神経科学的アプローチ」の原著「Extreme Fear, Shyness, and Social Phobia (Series in Affective Science)」のはしがき(Foreword)を執筆されています。また、67~87頁の「Behavioral inhibition and the emotional circuitry of the brain: Srability and plasticity during thr early childhood years(行動抑制と情動の脳回路-幼児期における安定性と可塑性)」も担当されています。デビッドソン博士は1970年頃から精力的に研究を続けており、特に感情障害や不安障害の神経科学的研究については大家と言えるほどの存在です。現在は前頭前野と扁桃体の相互作用と情動に関する研究に焦点をあてているようです。今回紹介した論文でも、引用文献53本中19本の中にデビッドソン博士の名前が挙がっています。行動抑制に関する研究を発表することも時々あります。

YouTubeにもデビッドソン博士の動画がアップされています。

YouTubeの動画:YouTube(Richard J. Davidson)

○認知行動療法と脳波

ところで、社会不安障害の治療に認知行動療法を用いると、脳波が変わったと報告する研究が今年発表されました。下に記したものがその研究報告です。ただし、私は要約しか読んでいませんし、現時点ではオンライン上の公開に限定されているため、巻号や頁は分かりません。

Miskovic, V., Moscovitch, D, A., Santesso, D, L., McCabe, R. E., Antony, M. M., & Schmidt, L. A.(2011). Changes in EEG cross-frequency coupling during cognitive behavioral therapy for social anxiety disorder. Psychological Science,

この研究では集団認知行動療法の結果、安静にしている時とスピーチに対する予期不安を持っている時にδ(デルタ)波とβ波の連動が減少しました。もちろん社会不安の症状も認知行動療法により緩和しました。

最近、薬物療法や心理療法によって脳が変化するかどうかを調べる研究が続々と発表されており、今後の進展に期待が持てます。

スポンサードリンク

Comment

スポンサードリンク

Trackback
Comment form
カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP