ストレスで声帯の基本周波数が高くなる社交不安障害患者 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(論文要旨)を読んだ、社交不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社交不安(障害)なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は社交不安(社会不安)が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)を合併していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会が発行するDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き第5版)では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回は社交不安障害の人は社会的脅威に暴露されると声が高くなるという研究です。これは男性で顕著なようです。

なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒身長が低い人ほど道を譲る(身長が高い人ほど道を譲らない)

Weeks, J. W., Lee, C. Y., Reilly, A. R., Howell, A. N., France, C., Kowalsky, J. M., & Bush, A. (2012). “The Sound of Fear”: Assessing vocal fundamental frequency as a physiological indicator of social anxiety disorder. Journal of Anxiety Disorders, 26(8), 811-822. doi:10.1016/j.janxdis.2012.07.005.

アメリカのアセンズ市にあるオハイオ大学心理学部やその不安評価治療センター(Center for Evaluation and Treatment of Anxiety)、同じくオハイオ大学のグローバーセンター(Grover Center)コミュニケーション科学コミュニケーション障害研究科の研究者による論文です。

○実験目的

社会的脅威状況における社交不安障害者の基本周波数(fundamental frequency)を調べることを目的としました。

基本周波数とは声帯振動数のことです。別称はF0または基音。基本周波数は心理的にはピッチ(音/声の高さ)としてとらえられます。基本周波数が高いほど声が高く感じられます。物理量が基本周波数、それに対応した知覚世界での心理量がピッチです。

○実験方法

社交不安障害患者と人口統計学特徴をマッチさせた健康統制者が参加。社会的脅威課題はスピーチを含む。

○実験結果

男性では統制群よりも社交不安障害群の方が声帯の基本周波数が高くなりました。これは2つの実験で確認できました。

一方、女性では全般性型の社交不安障害患者でのみ基本周波数が高くなり、また、これはin vivoの社会的暴露に対する反応を分析した時だけでした。普通、in vivoとは「生体内で」「実験が人為的にコントロールされていない」という意味ですが、要約だけではよく分かりません。ちなみにin vivoの対義語がin vitroで、「試験管内で」「実験が人為的にコントロールされている」という意味です。in vivoとin vitroはともに生理学や神経科学の論文に登場するラテン語語源の単語です。しかし、今回の研究のように心理学や臨床心理学、精神医学の論文でも見かけることがあります。

それでは、論文の結果に戻って…。被験者の性別によって社交不安障害(SAD)の判断の際に使う社会的脅威課題での基本周波数の閾値を変えることで、全般型SAD者と健康人とを識別することが可能でした。

○コメント

鑑別診断といえば、磁気共鳴画像法(MRI)で社交不安障害者と健常者の識別が84.5%の精度で出来るとの報告(Frick et al., 2014)機能的MRI(fMRI)で社交不安障害患者と健常者の鑑別が90%の精度でできるだけでなく、パニック障害(パニック症)と社交不安障害の鑑別も81%の精度でできるとの論文(Pantazatos et al., 2014)がありますね。本研究成果は社会的ストレス状況での声の高さを診れば社交不安障害かどうか分かるというものであり、社交不安障害の生理学的バイオマーカーとなる可能性を秘めています。

関連記事⇒内向的な人はスピーチで喉の舌骨下筋が緊張する

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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