遺伝子・扁桃体・不安 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は社会不安障害の人で、遺伝子と扁桃体の興奮性、症状の重篤度に関する研究をご紹介したいと思います。結論から言えば、セロトニン遺伝子が短い人ほど不安が強く、右半球の扁桃体が興奮しやすいという結果が得られました。スウェーデンの研究です。

Furmark, T., Tillfors, M., Garpenstrand, H., Marteinsdottir, I., Långström, B., Oreland, L., & Fredrikson, M.(2004). Serotonin transporter polymorphism related to amygdala excitability and symptom severity in patients with social phobia. Neuroscience letters, 362, 189-192.

★概要

遺伝子解析を行わなかったTillfors et al.(2001)のデータを遺伝子情報を加え、再分析した研究です。ただし、Tillfors et al.(2001)は社会不安障害の人と精神疾患がない人を比較しているのに対し、今回は社会不安障害の人の中で、長い遺伝子を有する人と短い遺伝子を有する人の比較を行っています。したがって、社会不安障害の人しか分析対象にはなっていません。

社会不安障害の人のセロトニントランスポーター遺伝子の長さを調べています。その長さと扁桃体の活性や不安の強さの関係を分析しています。また、6~8人の聴衆の前でスピーチをする条件と1人でスピーチをする条件を設けています。各条件中に扁桃体の活動を、条件終了後すぐに不安の強さを評定しています。

その結果、短い遺伝子を1個以上持つ人は長い遺伝子だけの人と比較して、有意に不安が強いことが分かりました。ただし、この傾向はスピーチ条件に関わらず現れていました。

一方、扁桃体の血流は、公の場でスピーチをしている時に短い遺伝子を持つ人の方が有意に増加しました。この増加は右半球だけに生じました。

★コメント

同じ社会不安障害の人でも遺伝子によって不安の強度や扁桃体の活性度が異なることを示した研究です。これは以前、「SSRIの効き目は遺伝子に左右される」という記事で紹介した研究と関係があるように思えてなりません。この研究では、短い遺伝子を1つ以上持つ人はSSRIが効きにくいという結果が得られていました。つまり、不安がそれだけ根強いことを意味しています。これは今回の研究結果と一致します。

扁桃体の右半球にだけ血流の増加があったことは、右半球の方が不安を反映しやすいという考えと一致しています。

追記(2011/6/27):ただし、参加者自身が非難される文を読んだり嫌な人からの評価を考えたりした場合は両半球の扁桃体が賦活した研究もあり、一貫した結果は得られていません。ただ、扁桃体における血流ではなく前頭葉の脳波に関しては右側が不安などの府の感情を担うと考えるのが一般的です(参考:社会不安障害と脳波)。(追記終わり)

血流の増加は神経細胞の興奮と相関しているとされます。ただ、あくまでも血流の増加で、神経細胞そのものの活動ではないので、割り引いて考える必要があります。

もう1つ。不安障害がない人との比較ではないので、どこまでが社会不安障害の特性なのかが分かりずらいという点があります。この点は最後に挙げた参考文献を併読して考えるしかないでしょう。この文献によれば、人前でのスピーチ中に、社会不安障害の人はそうでない人よりも右扁桃体の血流が増加しています。

第1著者のFurmark教授らが発表する研究は興味深いものが多いです。社会不安障害にプラセボ(偽薬)が効くことがある理由を脳と遺伝子という側面から迫った研究もあります。同氏は2011年現在、スウェーデンにあるウプサラ大学で教鞭を執っておられます。ウプサラ大学は北欧最古の歴史を誇り、ノーベル賞受賞者を輩出しています。

○参考文献
Tillfors, M., Furmark, T., Marteinsdottir, I., Fischer, H., Pissiota, A., Långström, B., Fredrikson, M.(2001). Cerebral blood flow in subjects with social phobia during stressful speaking tasks: a PET study. American Journal of Psychiatry, 158(8), 1220-1226.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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