マインドフルネスの遺伝率は32%(16歳) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)、研究方法、研究結果、考察、結論を読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回取り上げる研究は不安(障害)・恐怖と直接関係する論文ではありません。しかし、不安障害の治療はマインドフルネスで行うことも可能(Boettcher et al., 2014)で、なによりも本論文は青年でマインドフルネスの遺伝率や環境の影響、およびうつや不安感受性との関係を調べた初めての研究なので取り上げたいと思います。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒面接で笑顔を見せると不採用になる可能性が高まる

Waszczuk, M. A., Zavos, H., Antonova, E., Haworth, C. M., Plomin, R., & Eley, T. C. (2015). A multivariate twin study of trait mindfulness, depressive symptoms, and anxiety sensitivity. Depression & Anxiety, 32(4), 254-261. DOI: 10.1002/da.22326.

イギリスのキングス・カレッジ・ロンドン精神医学心理学神経科学研究所遺伝発達精神医学センター医学研究協議会社会?(MRC Social:Medical Research Council Socialの略語?)&心理学部、ウォーリック大学心理学部の研究者達による論文です。

○方法

データは双生児初期発達研究(Twins Early Development Study:TEDS)のものを活用。TEDSとは行動遺伝学者ロバート・プロミン教授(Professor Robert Plomin)がリーダーシップをとって行っている双子研究のことです。

双生児が16歳の時に実施した質問紙データを使用(平均年齢は16.32歳,SD=.68年)。総計で10,320人(女性55.51%,一卵性双生児35.59%, 同性二卵性双生児32.51%,異性二卵性双生児31.90%)から質問紙冊子を回収できたのですが、心理尺度によって人数が異なりました。たとえばマインドフルネスがN=2,118なのに対し、不安感受性やうつはN=9,608やN=9,609でした。

使用尺度
・マインドフルネス:マインドフル注意意識尺度(Mindful Attention Awareness Scale:MAAS)の短縮版。特に注意制御(attentional control)に注目し、得点が高いほどマインドフルネスが低いことを意味。
・うつ:短縮ムード感情質問票(Short Mood and Feelings Questionnaire:SMFQ)。SMFQでここ2週間のうつ症状を評価。
・不安感受性:児童不安感受性指標(Children's Anxiety Sensitivity Index:CASI)。不安感受性とは心臓の鼓動などの不安関連感覚に対する恐怖のことです。

○結果

男性より女性の方がマインドフルネスが低く、うつ症状や不安感受性が強くなりました(マインドフルネスの効果量はd=.14、うつはd=.41、不安感受性はd=.59)。

・マインドフルネスの相加的遺伝は.32(95%信頼区間.14–.41)、共有環境は.02(.00–.15)、非共有環境は.66(.59–.74)
・うつの相加的遺伝は.29(.19–.38)、共有環境は.12(.05–.20)、非共有環境は.59(.55–.63)
・不安感受性の相加的遺伝は.36(.27–.43)、共有環境は.05(.00–.12)、非共有環境は.59(.56–.63)

*非共有環境には計測誤差が含まれることに注意

マインドフルネスとうつ/不安感受性の表現型相関はどちらも.34(95%信頼区間.30–.37/38)でした。うつと不安感受性の表現型相関は.48(95%信頼区間.47–.50)でした。

・マインドフルネスとうつの遺伝相関は.52(.40–.64)、非共有環境相関は.22(.15–.29)
・マインドフルネスと不安感受性の遺伝相関は.53(.39–.66)、非共有環境相関は.22(.15–.30)
・うつと不安感受性の遺伝相関は.67(.63–.72)、非共有環境相関は.34(.31–.37)

*遺伝相関とは複数の表現型の間で共通する遺伝要因がどれぐらいあるかということを数字で表したものです。行動遺伝学では遺伝相関以外にも遺伝環境相関というものもあります。遺伝環境相関とは遺伝が環境を決定するという考えのことです。遺伝環境相関には3種類あり、それぞれ受動的、能動的、誘導的と言われています。詳しくは「緘黙を行動遺伝学で分析」を参考にしてください。

上の3つの組み合わせの表現型相関のどれも遺伝によって説明される割合は60%ぐらいでした。コレスキー分解(Cholesky decomposition)による多変量遺伝分析によると、マインドフルネスへの遺伝の影響の66%と非共有環境のほとんどすべての影響がうつや不安感受性への影響とは独立していました。

○コメント

本研究はあくまでも16歳時点のものです。他の年齢では結果が異なる可能性が十分あります。その理由は年齢によって結果が違ってくるのは行動遺伝学でしばしばみられることだからです。

また、本論文でのマインドフルネスとは注意制御だけであることに注意が必要です。論文の考察部(ディスカッション)にも書かれているように、マインドフルネスには価値判断をせずに、ありのままを受け止める要素もあり、この点に関しては不明のままです。

マインドフルネス、うつ、不安感受性の表現型相関の50%以上を遺伝の影響で説明できました。この結果に関して、論文の考察ではgeneralist genes hypothesis(総合者遺伝仮説)と一致すると書かれています。generalist genes hypothesisとは認知機能の多くを共通の遺伝因子が説明することで、主に学習障害の分野で使われる術語のことです。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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