飲酒後2~4時間以内に社交不安が低下する | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(論文要旨)、研究手法、研究結果を読んだ、社交不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社交不安(障害)なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は社交不安(社会不安)が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)を合併していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会が発行するDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き第5版)では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回はアルコールを飲んでから2~4時間以内には社交不安が低下するという研究です。

なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒ダークトライアドと嘘の上手さや虚偽検出には何の関係もない
↑ダークトライアドとはマキャベリズム、自己愛、サイコパシーの3つの性格特性のことです。ナルシストだと自己欺瞞が高い等、他の研究結果も興味深いです。

Battista, S. R., MacKinnon, S. P., Sherry, S. B., Barrett, S. P., MacNevin, P. D., & Stewart, S. H. (2015). Does Alcohol Reduce Social Anxiety in Daily Life? A 22-Day Experience Sampling Study. Journal of Social & Clinical Psychology, 34(6), 508-528. doi: 10.1521/jscp.2015.34.6.508.

カナダのダルハウジー大学の研究者達による論文です。

○研究目的

先行研究ではラボ(実験室での実験)でアルコールが状態社交不安を低下させるかどうか検証してきました。しかし、これまで自然状況で経験サンプリング法を用いてこのことを検証した調査はありませんでした。したがって、本研究では経験サンプリング法を用いて飲酒が社交不安の低下と関連するかどうかをリアル世界で調べることを目的としました。なお、経験サンプリングとはリアルタイムで1日に何回か調査回答者にその時の様子の報告を求める研究手法のことです。心理学者のミハイ・チクセントミハイ教授が経験サンプリング法を開発しました。英語ではExperience Sampling Methodという表記なので、ESMとも略されます。別名は経験抽出法です。

○研究方法

研究参加者は1か月に4回以上お酒を飲む大学生。最終的なサンプル数は132人(女性100人)。平均年齢は21歳で、標準偏差が2.65(範囲は17~32歳)。

使用尺度
・過去6か月間におけるアルコール使用のネガティブな結果:ラトガースアルコール問題指標(Rutgers Alcohol Problem Index:RAPI)
・社会的状況での特性不安:社会的相互作用不安尺度(Social Interaction Anxiety Scale:SIAS)

経験サンプリング尺度(計測は原則として1日6回)
・リアルタイムでの社交不安:状態社交不安(State Social Anxiety:SSA)
・飲酒量(Alcohol Consumption)
*寝ている時に起きて回答する必要はなしと教示

経験サンプリング尺度への回答は22日間継続。午後4時から午前4時までの間を2時間ごとに区切り、全部で6つのタイムフレームを設定。2時間の内にいつアラームが鳴るかはランダム。

○研究結果

調査への回答がすべてなされれば132人×22日間×6回/日=17,424個のデータが収集されるはずでした。しかし、集まったのは7,330でした(コンプライアンス率は42.1%)。ただ、回答がなかったものの多くは夜中の12時~午前4時のものでした。

お酒を飲まなかった日も含めて、22日間を平均すると1日につきビール0.55本の飲酒量でしたが、飲酒した日に限定するとビール4.40本に相当するアルコールを摂取していました。

年齢が上なほど飲酒量が少なくなりました。また、アルコール問題が強いほど飲酒頻度や飲酒量が多くなりました。ただし、これらは経験サンプリングで計測した飲酒頻度・飲酒量ではなく、最初の基礎調査時の飲酒量(記憶に基づくもの)であることに注意が必要です。また、特性社交不安はアルコール問題と正の相関関係を示しました。

経験サンプリング法で日ごとの最高値を22日間にわたり平均した飲酒量はベースラインの飲酒頻度と正の相関係数を示しました。また、経験サンプリング法での状態社交不安は特性社交不安・アルコール問題と正の相関関係を示しました。

さらに、アルコール1ボトルを消費すると2時間後のタイムフレームで状態社交不安が4.0%低下する計算になりました。状態社交不安が高いと2時間後の状態社交不安も高くなりました。特性社交不安が高いほど22日間の状態社交不安の平均値が高くなりました。飲酒問題が強いほど22日間の状態社交不安の平均値が高くなりました。ちなみに、補足解析では状態社交不安が週末に高くなりました。

実は研究チームはアルコール消費とその後の状態社交不安の低下は特性社交不安が高い人で顕著だろうという仮説を立てていました。しかし、仮説に反し特性社交不安の高低とは関係なく、飲酒が2時間後の状態社交不安の低下と関連していました。

○コメント

本研究の理論的背景はTension Reduction Theory(TRT)です。Tension Reduction Theoryとはアルコールが緊張や不安を低減し、この抗緊張作用・抗不安作用が飲酒行動を負の強化の働きで増加させ、結果として緊張や不安を飲酒でごまかすことになるという理論のことです。日本語にすると緊張緩和説などとなります。心理学で負の強化というと理解が難しく、曲者扱いされますが、負と強化に分けて考えれば簡単です。強化は反応が増加すること(ここでは飲酒行動)、負は刺激の除去や遅延のことです(ここでは緊張や不安の緩和)。したがって、負の強化とは反応随伴性のある刺激の除去や遅延で反応が増加することとなります。

本研究ではTension Reduction Theoryの内、飲酒が(社交)不安を弱めるという最初の仮説が日常生活場面で支持されましたが、アルコールが負の強化子として作用するかどうかはまた別の話です。

なお、本論文には飲酒の2時間後に社交不安が低下と表記されていましたが、厳密には2時間後と決まっているわけではありません。なにしろ「タイムフレーム(時間枠)」での話ですから。したがって、本記事のタイトルは「飲酒後2時間以内に社交不安が低下する」とせずに「飲酒後2~4時間以内に社交不安が低下する」としました。また、本研究は直接的な因果関係を立証したものではなく、あくまでも時間的関係を示したものにすぎません。よって、「アルコールで」や「飲酒で」という表記は不適切で「アルコールを飲んだ後」や「飲酒後」の方が適切です。

また、本論文はアルコールの即効性に関する検討をしたものではなく、あくまでも飲酒が次のタイムフレームの状態社交不安に与える影響を調べたものです。したがって、もしかしたらアルコールを飲むと5分後だとか30分後に社交不安が低下し、その効果が次のタイムフレームに持ち越されている可能性も考慮しなければなりません。このような理由から、「飲酒してから2~4時間『後』に社交不安が低下する」というタイトルは不適切となります。私が考えた限りで最も最適な記事タイトルは「飲酒後2~4時間『以内』に社交不安が低下する」となりました。

ただ、上戸の人はともかくとして、下戸の人には無理な話ですね。私はこれまで心理学研究室の飲み会をすべてそういうのに参加するタイプじゃないのでなどと言って断るなど、人との交流を避けていました。中学校、高校と帰宅部だったからなのか、大学のサークルに参加したこともありません。なのでこれまで飲酒機会がなく、正直興味もないので、体質的に飲めない人間かどうかいまだに謎です。なので、もし仮に「お酒飲める?」と聞かれたら「知らない」と答えるしかありません。ちなみに、AKB48の島崎遥香さん(ぱるる)もお酒が飲めないそうです。ぱるるは人見知りで口下手なのに加え、無愛想、頑固、マイペースと誤解を受けやすい性格だと言われています。これは塩対応が実は表面的なものだという仮説につながります(といっても単なる仮説で実証する術はありませんけどね)。


なお、ミズーリ大学コロンビア校心理学研究科の論文(Winograd et al., in press)によると、酔っ払いによる性格変化には4種類あります。勤勉性や知能への影響が少ないヘミングウェイ型(Hemingway)、素面の時は調和性が高く、酔っぱらっても勤勉性や知能が影響を受けにくいが、外向性が高くなるメリー・ポピンズ型(Mary Poppins)、酔うと勤勉性や知性が低下し、外向性が少し上昇するハイド氏型(Mr. Hyde)、素面の時は外向性が低いが酔っぱらうと外向性が高くなるナッティ・プロフェッサー型(The Nutty Professor)です。

関連記事⇒ほろ酔いで異性からアイコンタクトをもらう時間が増加する

○引用文献(アブストラクトだけ読みました)
Winograd, R. P., Steinley, D., & Sher, K. (in press). Searching for Mr. Hyde: A five-factor approach to characterizing “types of drunks”. Addiction Research & Theory. doi:10.3109/16066359.2015.1029920.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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