ほろ酔いで異性からアイコンタクトをもらう時間が増加する | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(論文要旨)、研究手法、研究結果を読んだ、社交不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社交不安(障害)なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は社交不安(社会不安)が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)を合併していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会が発行するDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き第5版)では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回は社交不安が高くてもアルコールを摂取すれば異性との社会的交流で不安が高まりにくくなり、喋る時間が増加、異性の相手の方も被験者とアイコンタクトをする時間が長くなり、フレンドリーさや好感度が上昇、不安が低下するという研究です。

なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒表情認知訓練で再犯の重さが低下する
↑少年犯罪をした青年が表情認知訓練を受けると、たとえ再犯をしても犯罪が軽微になるという研究です。特に恐怖や悲しみ、怒りといったネガティブ表情の認知力の向上が重要となります。ここでの表情認知訓練とは刺激表情の原因となる出来事を考えたり、鏡を見て自分で表情を作ることを含むトレーニングのことです。

Battista, S. R., MacDonald, D., & Stewart, S. H. (2012). The effects of alcohol on safety behaviors in socially anxious individuals. Journal of Social & Clinical Psychology, 31(10), 1074-1094. doi: 10.1521/jscp.2012.31.10.1074.

カナダ、ノバスコシア州の州都ハリファックスにあるダルハウジー大学の研究者らによる論文です。

最終的に解析に用いたのは88人のデータ(男性46人、女性42人)。平均年齢は21歳。54.5%は恋人なしで、45.5%は恋人あり。88人の特徴(組み入れ基準)はだいたい以下の通り(その他の細かい基準は省略)。

・平均値よりも社交不安が1SD(標準偏差)高い
・先月に2回以上2ボトル以上の飲酒をしたことがある
・ミシガン・アルコール依存症簡易テスト(Brief Michigan Alcoholism Screening Test:BMAST)の得点が5点以下
*社交不安(社会的状況での不安)の評価は社会的相互作用不安尺度(Social Interaction Anxiety Scale:SIAS)による。

アルコール(ウォッカ)を含んだオレンジジュースを飲んだ群が45人、全てオレンジジュースであった飲み物を飲んだ群が43人。両者に性別やエスニシティ、恋人の有無、年齢、社交不安、日常生活での飲酒量、飲酒問題に有意差なし。飲酒時間は20分で、吸収待ち時間が20分。計40分の間は自然映画の鑑賞。

*面倒くさいので、飲酒をしなかった群も飲酒と表記。

飲酒後に異性(実は実験協力者のサクラ)との社会的交流を15分間行うと教示し、実施。実験者は社会的交流中に行う質問を被験者とサクラに呈示。

使用尺度
・ここ30日での飲酒量:日常飲酒質問紙(Daily Drinking Questionnaire:DDQ)
・ここ3年間での飲酒関連のネガティブな結果:ラトガース飲酒問題指標(Rutgers Alcohol Problem Index:RAPI)
・他者から観察される社会的状況での不安:社交恐怖尺度(Social Phobia Scale:SPS)

血中アルコール濃度(Blood Alcohol Concentration:BAC)の単位は血液100mlあたりのアルコール量(グラム)とし、パーセンテージ表記。狙いはBAC=0.07%(ほろ酔い気分)。飲酒検知器、breathalyzerで計測。計測時期は社会的交流をやる前に飲酒をした直後と社会的交流をした直後。血中アルコール濃度の計測時に主観的陶酔評価表(Subjective Intoxication Rating Form:SIRF)で酔っ払いレベルを評価。

状態社交不安の評価はビジュアルアナログスケール(Visual Analogue Scale:VAS)による。精神的苦痛、身体的苦痛、否定的評価恐怖の3尺度を使用し、合計得点を算出。評価時期は飲酒前、飲酒20・40分後、社会的交流課題後(社会的交流課題後では社会的交流中の社交不安を評価)。

安全保障行動・安全確保行動(Safety behaviors)の評価は訓練を受けた心理学の大学生による。安全保障行動とは不安が高い状況で不安を低減させようとする行動のことで、安全保障行動をとると逆に不安が維持されることが知られています。社会的交流課題で撮影したビデオに基づき安全保障行動を評価。安全保障行動の指標はサクラとのアイコンタクトの時間、神経質な笑い声(nervous laughter)をたてている時間、サクラからの質問に回答している総時間、サクラからの質問に応答するまでにかかった反応潜時。

*安全保障行動とアイコンタクトの関係については「アイコンタクトを減らせ」という指示が社会不安が高い人にとって最も不安を誘発するという研究(Langer & Rodebaugh, 2013)が参考になります。

サクラの行動もコーディングを実施。サクラのフレンドリーさや不安、好感度、冷淡さ、被験者とのアイコンタクトの時間を評価。

○実験結果

社会的相互作用不安尺度(SIAS)と日常飲酒質問紙(DDQ)が負の相関関係(r=-.27)。各種不安尺度も正の相関関係(書くの面倒臭いので省略)。DDQとラトガース飲酒問題指標(RAPI)が正の相関関係(r=.44)。

飲酒群での血中アルコール濃度(BAC)の平均値は飲酒直後で0.056%、社会的交流後で0.059%。実際に、飲酒直後、社会的交流後の両方で主観的な評価がほろ酔いになりました。正味のオレンジジュースしか飲まなかった群(統制群)は血中アルコール濃度が0.000%で、酔いの気分もゼロでした。

ビジュアルアナログスケール(VAS)での状態社交不安(社会的交流後)と正の相関関係があったのは神経質な笑い声、SIAS得点、社交恐怖尺度(SPS)得点でした(r=.23~.33)。サクラからの質問に答え始めるのに時間がかかったほど話す時間が短くなりました(r=-.40)。

ただし、神経質な笑い声については評価者間信頼性が他の指標よりも低くなっていたことに注意が必要です。

社会的交流課題があることを知らせる前(飲酒は完了:以下ベースラインとする)よりも、社会的交流後の評価の方が状態社交不安が高くなりました。ベースラインでは飲酒群と統制群で有意な社交不安の違いが検出されませんでした。しかし、統制群よりも飲酒群の方がベースラインから社会的交流後の評価において社交不安の増加が弱くなりました。

また、統制群と比較してアルコール群は社会的交流時に喋る時間が長くなりました(コーエンのd=.67)。ちなみに有意差は検出されていないものの、質問に答えるまでにかかった時間はアルコール群の方が短くなりました(コーエンのd=.30なので、効果量的には小さい効果)。神経質な笑い声とアイコンタクトでは有意差もないし、効果量的にも小さすぎました。

サクラは被験者のオレンジジュースにウォッカが混入されているかどうか知らなかったし、台本にそって中性的に振る舞うよう訓練されていたのですが、統制群のサクラよりも飲酒群のサクラの方が被験者とアイコンタクトをする時間が長くなり(d=.70)、フレンドリーと評価され(d=.58)、好感度も高くなり(d=.50)、不安が低下(d=.49)しました。冷淡さの評価では有意差が検出されていないものの、コーエンのd(Cohen's d)値が.31で、アルコール群のサクラの方が低くなりました。

さらにサクラのアイコンタクト時間と被験者のアイコンタクト時間(r=.23)や被験者の話す時間(r=.29)が正の相関関係を示しました。社会的交流中のサクラの不安が被験者の神経質な笑い声と正の相関を示しました(r=.23)。

飲酒群のサクラと統制群のサクラでの行動の違いが被験者の安全保障行動に影響した可能性が考えられました。しかし、サクラのアイコンタクト時間やフレンドリーさ、好感度、不安を共変量として統制しても被験者自身の行動指標の結果は変わりませんでした。このことからサクラの行動が被験者の行動に影響したというよりは、被験者の飲酒がサクラの行動反応を変化させたと考えられました。

*サクラのアイコンタクト時間の評価者間信頼性は高かったです。が、フレンドリーさや好感度、不安、冷淡さについては評価者間信頼性が落ちていました。

○コメント

以上をまとめると、

・社会的交流後に評定した交流中の状態社交不安が高いほど交流中に神経質な笑い声をたてるかもしれない

・飲酒で社会的交流中の社交不安の増加が弱くなり、喋る時間が増加

・社会的状況での不安が高い被験者がウォッカ(アルコール)を飲んでほろ酔い状態だと、異性の交流相手(サクラ)が被験者とアイコンタクトをする時間が長くなり、フレンドリーになり、好感度も上昇、不安が低下(≒AKB48流に書くと神対応?)


となります。

アルコールを飲むと自分の社交不安の増加に歯止めがかかったのですが、交流相手の不安も低下するというのは面白いですね。もっとも、サクラ自身が不安を評定したのではなく、第三者である観察者がサクラの不安を評定したことに注意が必要です。また、本研究はサクラが異性の場合の話で、同性でも同様の結果が得られるかどうかは不明です。さらに、被験者は全員通常よりも社交不安が高い人だったので、社交不安が平均的な人や低い人でも同様の結果が再現されるかどうかは分かりません。

飲酒による性格変化には少なくとも4種類ある(Winograd et al., in press)とされますが、はたして性格変化が本実験結果とどのような関係があるのか、調査が必要だと思われます。

関連記事⇒飲酒後2~4時間以内に社交不安が低下する

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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