緘黙の4類型で緘動タイプは高学年ほど多くなる | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

神戸国際大学の成瀬智仁さんが小学校教員の緘黙児の担当経験はどのくらいかを調査したり、緘黙の類型化を試みた研究を実施されました。本研究は2015年8月26日~28日に朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)を会場とした日本教育心理学会第57回総会でポスター発表されました。

成瀬智仁(2015). 緘黙児童に対する小学校教員の教育援助について ―緘黙症状の類型と小学校教員のかかわり― 日本教育心理学会第57回総会発表論文集, 415.

なお、成瀬さんは2015年9月19日~21日に宮城県東北大学川内北キャンパスで開催される日本特殊教育学会第53回大会において「緘黙児童に対する小学校教員の指導意識について ― 緘黙についての理解と指導意識の類型 ―」と題するポスター発表を行う予定です。論題を読む限り、2014年に同氏が日本教育心理学会第56回総会で発表した「緘黙生徒に対する高校教員の指導意識について -緘黙についての理解と指導意識の類型-」の小学校バージョンと解釈できます。継続的に(場面)緘黙症の調査に取り組んでいただき本当にありがたいことです。

○方法

同一市にある公立小学校24校の教員に質問紙調査。ここでの教員とは教諭・講師のこと。調査協力者は335人(女性231人,男性104人)。平均年齢は40.1歳(20代96人,30代94人,40代26人,50代以上119人)。

○結果

担任教諭239クラスの内、緘黙児が在籍しているのは36クラス(15.1%)で、わからないは7クラス(2.9%)。緘黙児担任経験のある教員は158人(46.9%)、担任経験のない教員は154人(45.7%)、わからないは25人(7.4%)。

教員年代別の緘黙児担任経験は20代で26.8%、30代・40代で38.9%でした。これに対し、50代は66.7%、60代は71.4%でした。成瀬氏はこれを「教員経験が長いほど緘黙児にかかわる割合が高かった」と総括しています。しかし、先生の年齢と教員経験年数が単純に比例関係にない事情、つまり20代ではなく、もっと年をとってから一念発起して教員採用試験に合格し教壇に立った人もいる可能性もあり、そこらへんがツッコミどころになります。全体としてそんなに影響はないかもしれませんが、厳密な調査をするならば年齢と教員経験年数を区別した調査が必要です。

「緘黙児担任経験教員より回答されたのは166ケースであり,女子105名(63.3%),男子61名(36.7%)」。

緘黙児特性の主成分分析の結果、「動作表現」と「言語表現」の2成分が抽出されました。「動作表現」との相関係数(因子負荷量)が高い順に「交友関係」、「動作のぎこちなさ」、「表情」、「教師との目線」、「対人恐怖の傾向」、「行動」、「文章での表現」、「学習の理解」、「緊張の度合い」でした。「言語表現」との相関係数が高い順に「先生との会話」、「本読み」、「学校での会話」でした。

主成分得点をもとにしたクラスター分析により以下の4類型ができあがりました(統計学の専門用語で何やら難しいですが、簡単に書くと質問紙項目の情報を「動作表現」と「言語表現」の2つに圧縮し、この2つの得点をもとにグループ分けを行ったといったところでしょうか)。

・緘黙タイプ:ほとんど話さない(49人,30%)
・緘動タイプ:動かない(45人,27%)
・消極タイプ:話も行動も控えめ(42人,25%)
・寡黙タイプ:少し話せて行動は出来る(29人,18%)
*4類型のうち、緘動タイプは小学校高学年になるほど多くなりました。

その他、以下のような結果が得られています。
・「学年別の緘黙症状は高学年ほど『表情』,『交友関係』,『教師との目線』などで現れ,低学年との間に有意差」
・「『学習の理解』や『文章表現』でも高学年は低評価の傾向」
・緘黙症状の改善は「教員との視線」を合わすことが出来るほど、また、 「動作のぎこちなさ」がない児童ほど生じやすかった(ただし、「考察」には緘黙症状が改善した児童ばかりではなく、悪化する児童も存在したことが書かれています)

○コメント
私はかんもくガール: しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常例によって、ただたんにポスター発表の内容を書き写したような書き方になってしまいましたが、そもそもポスター形式にしている時点ですでに論点が十分に絞られているので、仕方がないことです。いつもこんな形になってしまい本当に申し訳なく思います。

4類型ですが、他にも場面緘黙症の分類がありますね。たとえば、らせんゆむ著・かんもくネット解説の『私はかんもくガール: しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常(合同出版)』のp.55には「場面かんもくの症状をもつ子どもの分類」として以下の5つをあげています。これはイギリスの緘黙支援の第一人者、マギー・ジョンソンさんが行った分類です。
・場面かんもく傾向
・純粋な場面かんもく
・言葉に苦手がある場面かんもく
・複合的場面かんもく(発達的問題や心理的問題の合併)
・遅発発症の場面かんもく(学校での孤立やいじめによる発症が多い)
もっと古い話になると、TypeⅠ(社会化欲求型)、TypeⅡ(社会化意欲薄弱型)、TypeⅢ(社会化拒否型)という大井ら(1979)の分類や第Ⅰ群(積極的依存型)、第Ⅱ群(消極的依存型)、第Ⅲ群(分裂気質型)という荒木(1979)の分類というものもあります(詳細は「大井らの緘黙児分類と荒木の緘黙児分類を批判」を参考のこと)。

現段階ではどれが良いのか研究者達も模索している状況だろうと思います。また、場面緘黙症の状態や原因の説明、緘黙症状の経過、支援の方法、予後の違いなど緘黙の色々な側面ごとに様々なタイプ分けがされても不思議ではありません。さらに、これらは全く無関係というわけではないでしょう。場面緘黙症の原因によるタイプ分けは支援方法による分類にもつながっていきます。

ただし、本研究は小学校教員から見た場面緘黙症の類型化であることに注意が必要です。また、緘黙児に遭遇した経験のある教員に対する調査で4類型が認められたのですから、現在見た場面緘黙児の状態ではなく、記憶に基づく回答であるものも含まれているはずです。なので、他の緘黙類型化研究と比較する際にはこれらの点に注意する必要がありそうです。もっとも、記憶に基づく質問紙調査であるからこそ、「緘黙症状の変化」を時間をかけずに調べられたのでしょうから、一長一短ですね。

4類型のうち緘動タイプは小学校高学年になるほど多くなりました。仮に緘動がある場面緘黙症を重症とみなすならば、高学年になるほど重症の緘黙児が多くなることになります。これは場面緘黙児の認知行動療法の予後1年で緘黙症状が重篤である子供ほど治療成果が出にくいという海外の研究結果(Oerbeck et al., 2015)と一致します。というのも重度の緘黙症状があるほど改善しにくいということを、重症児だけが緘黙のまま成長していくという解釈として受け入れることが可能だからです。しかし、果たして「緘動がある=場面緘黙症が重症である」と言い切れるのか?という疑問の余地があります。少なくとも私は緘動がある方が緘黙症状が重いという研究を見たことがありませんand/or読んだ記憶がありません(直感としては緘動がある緘黙児・者の方が重症だというのは分かりやすいのですが…)。あるいは高学年になるほど自我が発達していくと考えられるので、自意識過剰で緘動タイプが多くなるという解釈もできます。

なお、本研究データは以下のURLからダウンロード可能です。2種類ありますが、2つ目がPDFファイルでこちらの方が表と図が添付されているので、PDFの方をお勧めします。
○引用URL(2015年9月19日現在)
成瀬智仁(2015). 緘黙児童に対する小学校教員の教育援助について ―緘黙症状の類型と小学校教員のかかわり― 日本教育心理学会第57回総会発表論文集, 415.
https://confit.atlas.jp/guide/event/edupsych2015/subject/PD069/detail?lang=ja
https://confit.atlas.jp/guide/event-img/edupsych2015/PD069/public/pdf?type=in

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Comment
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市教委の特別支援アドバイザーをしております。
興味深く拝読させていただきました。
緘黙は体感的には500人~600人規模の小学校で1名は在籍していると考えております。
ただ、発達障害や不登校に比べ注目されることも少なく、教員研修のテーマとして取り上げられることも稀です。
本研究データを緘黙の子ども達の担任と研修機会を設け精読させていただきます。

ありがとうございました。


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Re: タイトルなし
コメント、ありがとうございます。本ブログが参考になったのなら幸いです。ただ、私の場合は様々な研究を紹介しているだけです。実際に調査・研究でデータを収集している方の方が苦労されているはずで、研究者の方への感謝も忘れてはなりませんね。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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