森田療法は不安障害に効くか? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけを読んだ不安(障害)の治療法に関する最新の論文を取り上げます。

なぜ不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併発していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害になりました。

今回は森田療法の効果を系統的レビューで検証した論文です。森田療法とは森田正馬(精神科医)氏によって1919年に創始された神経症に対する精神療法のことです。森田正馬氏は東京慈恵会医科大学精神神神経科の初代教授です。今でも東京慈恵会医科大学附属第三病院に森田療法センターというものがあります。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒透明人間の錯覚で痛覚感受性が高まる
↑透明人間を感じると痛みを感じにくくなると思いきや、逆に痛覚に敏感になったという実験結果が得られています。透明人間の錯覚実験の先行研究では視覚刺激と触覚刺激を時間的、空間的に同期・一致させて、透明身体の所有感錯覚を引き起こしていました(Guterstam et al., 2015)。しかし、今回はバーチャル世界(仮想世界)で第一人称視点の身体所有感錯覚の誘発を行うことで透明人間の感覚を味わっています。これだと実験者が設定した透明レベルで実験が可能です。

Wu, H., Yu, D., He, Y., Wang, J., Xiao, Z., & Li, C. (2015). Morita therapy for anxiety disorders in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2, Art. No.: CD008619. DOI: 10.1002/14651858.CD008619.pub2.

中国の上海交通大学医学研究科上海市精神衛生中心(センター)、上海交通大学医学研究科精神医学的疫学研究学部&EEGソースイメージング学部&心身医学学部&上海精神病障害重点実験室(ラボ)、同済大学上海楊浦区病院医学研究科の研究者らによる論文です。この論文はコクラン・ライブラリのコクランレビューデータベース(The Cochrane Database of Systematic Reviews:CDSR)に収録されています。

○背景(+基礎知識)

私は詳しくは知らないのですが、森田療法とは神経質性格が元の「とらわれ」から脱却し、不安や恐怖、症状を「あるがまま」として受け入れ、より良く生きようとする欲望(生の欲望)として生かし、建設的行動にもっていく精神療法のことです。森田療法はうつ病や強迫性障害、社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)、パニック障害などに効き目があるとされています。詳しくは東京慈恵会医科大学森田療法センターのHP(http://www.jikei.ac.jp/hospital/daisan/morita/index.html)や公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団の森田療法の解説ページ(http://www.mental-health.org/morita.html)、森田療法研究所のHP(http://www.neomorita.com/)などをご覧ください。なお、これらのサイトのリンク方針が不明なため、本ブログに直接リンクを貼ることはしません。

実際、森田療法は日本や中国で不安障害の代替療法として実践されています。しかし、森田療法が有効であるという科学的エビデンス(科学的証拠)はあるのでしょうか?今回は不安障害への森田療法の有効性を検証するために、複数のランダム化比較試験(Randomised Controlled Trials:RCTs)を収集して系統的レビューを行った研究です。 対象は子供ではなく大人です。

○方法

いろんなデータベースから不安障害に対する森田療法の効果をRCTで検証した論文・文献を集めました。

○結果

中国の小規模研究が7つ発見され、そのうちの6つにメタ分析(メタ解析・メタアナリシス)に有益なデータがありました。森田療法群と無活動統制群(inactive control)を比較した研究は皆無でした。無作為化の方法が不明瞭だったり、盲検法が使用されていなかったり、効果指標(アウトカム)の報告の質が低かったりした研究が多くなりました。したがって、バイアスリスクが高く、エビデンスの質がとても低いと判断されました。以下、その詳細です。

社交不安障害では森田療法と薬物療法を比較した研究が2つ発見されました(外来患者75人)。これらは少なくとも治療後12週間までは薬物療法よりも森田療法の方が効果的であるという結果でした。ドロップアウト率のデータは不十分で、副作用・有害作用の報告がされていませんでした。ここでもRCTの質は非常に低いと判断されました。この判断の理由はバイアスリスクが高く、結果の報告が不十分であることによります。

森田療法と薬物療法の併用を薬物療法単体と比較した研究が4つ発見されました。そのうち3つが強迫性障害(入院患者228人)で、全般性不安障害の研究が1つ(入院患者60人)でした。強迫性障害では1つの研究で全般的状態に関するデータが不十分で、他の3つの研究(全般性不安障害の論文含む?)では全般的状態のアウトカムの報告が欠けていました。強迫性障害の研究2つで短期的なドロップアウト率に有意差はありませんでした。また、副作用・有害作用によるドロップアウトについては情報が不十分でした。全体的にバイアスリスクが高く、エビデンスの質が低いと判断されました。

○コメント

全般的に森田療法の科学的エビデンスはまだ確立されていないようです。なので、森田療法で絶対治る!のような誇大宣伝・誇大広告には注意した方がよさそうです。なお、エビデンスがない=効果がないと誤解する人もいるかもしれませんが、実際はそうではなくエビデンスがないというのはその治療法に効果があるかどうか不明であり、まだまだ結論付けることはできないことを意味するのに注意が必要です。それにある特徴をもった人達にだけ効くということもあり得る話で、その場合は全体的には効果がないけど、ある特定の集団では効果が認められるということになり、もっと注意深い分析が必要になります。

なお、本系統的レビューはSagaceという医学/生命科学のデータベースで日本の文献も探していたのですが、最終的にレビューに含めたのは中国の研究だけでした(実際には日本や中国以外の研究も探していますが、やはり中国の研究だけ詳細にレビューしたようです)。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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