ナルシストの親の育児が子供(成人)の抑うつ・不安を高める | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)、調査方法、調査結果(+序論の一部など)を読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害を併発していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回は親の自己愛(ナルシシズム)からくる養育スタイル(育児スタイル)が子供(成人)の抑うつや不安を高めるというお話です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒キスをする文化がある社会は少数派で46%
↑キスは普遍的な文化ではなく、むしろキスをする社会の方が少数派であるという研究です。アジアやアフリカ、中東など地域ごとのキスあり/なしの割合を表にまとめています。

Dentale, F., Verrastro, V., Petruccelli, I., Diotaiuti, P., Petruccelli, F., Cappelli, L., & Martini, P. S. (2015). Relationship between Parental Narcissism and Children's Mental Vulnerability: Mediation Role of Rearing Style. International Journal of Psychology & Psychological Therapy, 15(3), 337-347.

イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学、ラツィオ州メリディオナーレカッシーノ大学?(università degli studi di cassino e del lazio meridionale)、コレエンナ大学?(Kore University of Enna)、初代代表がカール・ユング氏だという国際精神分析学会(International Psychoanalytical Association,IPA)会員?の研究者らによる論文です。

○研究目的

親のナルシシズムとaffectionless controlスタイル、心理的脆弱性の関係を調べることを目的としました。affectionless controlとは愛情なき統制ということで、ケアが低いのに過保護だという意味です。なお、ここでの心理的脆弱性とは抑うつや不安のことです。

○方法

後述しますが、本研究では親自身が自分の自己愛傾向に関する質問紙に回答しました。両親も調査に参加できた人数は409人となり、彼らに関してデータ解析しました。子供は女性264人、男性145人(平均年齢22.85歳)。母親の平均年齢は50.37歳、父親の平均年齢は54.10歳。

使用尺度は以下の通りです。
・両親のナルシシズム(評定者は親):自己愛人格傾向尺度(Narcissistic Personality Inventory:NPI)
・子供の特性不安(評定者は子供):状態不安特性不安尺度(State–Trait Anxiety Inventory:STAI-Y form)の特性尺度(trait scale)
・過去2週間の子供の抑うつ(評定者は子供):ベック抑うつ質問紙(Beck Depression Inventory:BDI)
・両親の養育スタイル(評定者は子供):親との絆質問紙(Parental Bonding Instrument:PBI)

Parental Bonding Instrumentとは養護(care)と過保護(over-protection)の2因子からなる子供目線の親の養育態度を測る質問紙のことです。今回はこの2因子に加え、非難/辱め(putdown/shaming)とえこひいき(favouritism)を加え4因子としました。本論文では16歳までの父親と母親の養育スタイルを子供(といっても、もう成人済みの大人)が評価しました。

○結果

父親・母親のナルシシズムは養護と負の相関関係(相関係数:父親で-.16、母親で-.29)でした。一方、正の相関関係を示したのは両親のナルシシズムと過保護(父.25, 母.30)、非難/辱め(父.35,母.35)、えこひいき(父.31,母.20)、子供の抑うつ(父.17,母.17)、不安(父.15,母.15)でした。

父親でも母親でも養護と過保護、非難/辱め、えこひいきが中等度に負の相関を示しました。養護は子供の抑うつや不安とも弱い負の相関を示しました。過保護、非難/辱め、えこひいきは互いに正の相関を示し、これらの養育スタイルはすべて子供の抑うつや不安と正の相関を示しました。

媒介モデルの解析から父親や母親の自己愛が養育スタイルを媒介として、子供の抑うつや不安に影響していることが示唆されました。つまり、両親の自己愛→親の育て方に関する子供(成人)の回想→子供の抑うつ・不安という間接パス(間接経路)が支持されました。この媒介モデルで父親の場合だと子供の抑うつの16%、不安の17%を説明し、母親の場合だと抑うつの21%、不安の17%を説明しました。ただし、父親では非難/辱めによる媒介が成立せず、母親では養護による媒介が成立しませんでした。

○コメント

実は私は自己愛研究に詳しくないので、以下には誤りがあるかもしれません。何かあればご指摘ください。

今回は普通の自己愛傾向についてでしたが、病的なナルシシズムには誇大感(grandiosity)と脆弱性(vulnerability)の2タイプがあるとされます。誇大感とは自分の能力を過大に誇張することや誇大妄想等を特徴とする自己愛のことで、脆弱性とは他者が自分の存在に気付いてくれないとがっかりする、自分の弱さを他人に見せるのは耐えられないなど、承認・賞賛への過敏さなどを特徴とする自己愛のことです。ただし、自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)には誇大型と脆弱型以外にも様々な類型があります。今回の研究に照らして考えれば、単に両親の自己愛がどうのこうのという話をするのではなくて、自己愛の種類による違いについても検討されてほしいですね。親が自己愛性パーソナリティ障害だった場合、子供のうつ病・不安障害リスクが高い可能性がありますし。もっとも健康な自己愛と病的な自己愛はスペクトラム(連続体)ではなく、カテゴリー的に別物だというのであれば、本考察は的外れということになりますが。

それにしても両親の平均年齢が50歳以上と高齢になってからの自己愛を過去の養育スタイルと結びつけるのはいささか強引だと思いますね。まるでタイムマシンに乗って過去にさかのぼったような気分になります。できることなら、子供が成人してからではなく、子育て真っ盛りの期間に両親の自己愛を評価してほしいところです。養育スタイルの評価も成人済みの子供の記憶だけに頼るのではなく、育児に忙しい頃の親による自己評価や実験課題中の行動観察などを通して多角的に実施した方が良いでしょう。

なお、たとえ親の自己愛傾向が子供の抑うつや不安に間接的に影響するにしても、ナルシシズムは要因の1つにすぎないことに注意が必要です。社交不安(社会不安)に関していえば、親(特に父親)の社交不安が子供に与える影響も重要な要因になってきます。

参考記事⇒進化心理学モデル:父親の社交不安の方が母親の社交不安よりも影響力が強い

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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