社会的支援が少ない場合、抑制気質が持続する? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »   行動抑制の論文  »  社会的支援が少ない場合、抑制気質が持続する?

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は気晴らしに行動抑制に関する論文を読んでみました。復習を兼ねてアップしておきます。

行動抑制とは見知らぬ人や場所、状況に対して過度に警戒心をもち安易に近づかない気質だとか行動パターンを指します。私が現在読んでいる『Extreme Fear, Shyness, and Social Phobia (Series in Affective Science)』によれば、警戒心を抱く対象が人ならシャイ、状況なら内気と呼ぶと行動抑制に関する研究者であるKagan教授は指摘しています。

Fox, N. A., Nichols, K. E., Henderson, H. A., Rubin, K., Schmidt, L., Hamer, D., Ernst, M., & Pine, D., S.(2005). Evidence for gene-environment interaction in predicting behavioral inhibition in middle childhood. Psychological Science, 16, 921-926.

上記の研究をとりあげます。不安との関連が疑われる短いセロトニントランスポーター遺伝子と社会的支援という環境要因の相互作用が子どもの行動抑制に及ぼす影響を調べた研究です。

○調査手法

・幼児の抑制傾向の程度を1歳2ヶ月の時に定量化。同じ幼児が7歳になった時にもう一度行動抑制の度合を調査。7歳のときには恥ずかしがり屋(シャイ)の程度も調べた。

行動抑制⇒実験者の観察
シャイネス⇒母親に質問紙調査
社会的支援の程度⇒子どもが4歳の時に母親が質問紙に回答

○結果
 
7歳の時に行動抑制やシャイネスが強いのは子どもの遺伝子が短く、母親が社会的支援を少ないと感じる場合でした。逆に言えば、たとえセロトニントランスポーター遺伝子が短くても適切な社会的支援があれば、抑制気質やシャイネスが高まる可能性を低下させることができるということになります。もちろん1歳2ヶ月のときの抑制傾向も重要な要因でした。しかし、少なくともこの研究は社会的支援が行動抑制の緩衝剤となりうることを示しています。

○愚見

筆者らによれば、遺伝子と環境の相互作用が不安に与える研究は動物実験ばっかりで人間を対象にしものは少ないそうです。しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)を経験した子どもにおいて、遺伝子と社会的支援の相互作用がうつ症状に与える影響を調べた研究が当論文中で引用されています。そんな研究があるとは知りませんでした。たまには他の分野の研究論文を読んでみると新しい発見があります。

ただ、遺伝と環境の相互作用に関する文献の引用が少なかったので、まだまだこの分野の研究は進展していないなあと感じます。そういえば、この論文は相互作用の研究手法として有名な双生児を対象にしたものはほとんど引用していなかったなあ。

ただ、次の考え方も有り得るかもしれません。

・社会的支援が低いことはコミュニティへの参加が少ないことの裏返しである。コミュニティに参加する機会が少なければそれだけ抑制気質やシャイネスが持続する。

○その他

・親の過去の記憶に頼らない縦断的研究という点を筆者らは強調している。

・変換した値を図示していたので実測値が知りたい。実際にどれぐらい差があるのだろうか?

・長いセロトニントランスポーター遺伝子がシャイネスと関係しているとの報告が引用されている。サンプルの人口学的特性はどうなっているのだろう?

追記(2011/628):一口に社会的支援(ソーシャルサポート)といっても、道具的支援(子育てを直に助けるなど)や情緒的支援(精神的な支えとなる励ましなど)というような区別ができます。これらの種類の程度によって子どもの抑制気質が維持させるかどうかが異なる可能性もあります。

スポンサードリンク

Comment

スポンサードリンク

Trackback
Comment form
カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP