セルフコントロールが低い高社交不安者 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(論文要旨)だけを読んだ、社交不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社交不安(障害)なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は社交不安(社会不安)が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)を併発していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き第5版)では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回は社交不安が高い人はセルフコントロールが苦手、しかも社会的交流を行った後に自己制御資源が枯渇しやすいという研究です。セルフコントロール(自己制御/自己調整)とは目標達成のために自分の感情や欲求、行動などを統制する力のことを言います。

なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒感謝すると甘い食べ物の誘惑に負けるようになる
↑ダイエットするなら感謝は厳禁ですね(笑)

Blackhart, G. C., Williamson, J., & Nelson, L. (2015). Social Anxiety in Relation to Self-Control Depletion Following Social Interactions. Journal of Social & Clinical Psychology, 34(9), 747-773. doi: 10.1521/jscp.2015.34.9.747.

イーストテネシー州立大学、カンザス州立大学、バンダービルト大学の研究者による共著論文です。

○研究目的

本研究の目的は社交不安とセルフコントロールの関係を調べることでした。

○研究結果

Study1(研究1)は社交不安が一般的自己制御特性と負の相関関係にあることを示しました。Study2とStudy3は社交不安が高いと、社会的交流(社会的評価・他者と一緒に課題に取り組むこと)の後にセルフコントロールが苦手になることを行動を指標として示しました。

○コメント

アブストラクトしか読んでいないので、セルフコントロールをどのように評定したのかが気になります。一般にセルフコントロールは時間割引課題で測ることができます。時間割引とは今すぐもらえる1万円と1年後にもらえる1万円だと後者の主観的価値が割り引かれる(低下する)現象のことです。そこで、たとえば、今すぐもらえる1万円と1年後にもらえる2万円のどちらを選択するかという比較調査が行われたりします。金額だけ見ると後者の方が前者の2倍ですが、2万円の主観的価値は1年の遅延時間によって割り引かれているため、前者を選択する人と後者を選択する人の両方がでてくるわけです(個人差)。一般に、即時小報酬よりも遅延大報酬を選択する場合にセルフコントロールが高い、遅延大報酬よりも即時小報酬を選択する場合に衝動性が高いという判断が下されます。

時間割引率で狭義のセルフコントロールを測れますが、果たして今回の論文は時間割引の実験手続きを踏んだのでしょうか?それとも、別の方法でセルフコントロールを計測したのでしょうか?気になります。なお、子供のセルフコントロールでは満足の遅延課題(delay of gratification task)の成績を指標とすることがありますが、これはいわゆるマシュマロテスト(マシュマロ実験)と呼ばれている課題です。マシュマロテストとはウォルター・ミシェル(スタンフォード大学)という心理学者が考案した実験のことで、マシュマロを1つ子供の目の前に置き、実験者が退出してそばにいない時も食べずに我慢できたらもう1つマシュマロをもらえるというものです(実際にはもっと実験にバリエーションがあります)。社交不安がセルフコントロールの低さと関連するという本研究成果が子供にも当てはまるかどうかは不明ですが、社交不安が高い子が多いとされる場面緘黙児のセルフコントロールを調査するならば、マシュマロテストが第一候補になります。

なお、時間割引以外にも確率割引や社会割引といった研究課題もあります。確率割引とはたとえば金銭を受け取る確率が低下するにつれて、その主観的価値が低下する現象のことです。社会割引とは報酬を独占する場合と比して、他個体との報酬共有で主観的価値が減衰する現象のことです。

本論文では社交不安が高い人が社会的交流後にセルフコントロールが低下しやすいことによる影響を対人関係の悪化や社交不安症状の悪化といったネガティブな意味合いで議論しているようです。しかし、自己制御を要求される課題を行った後に自我消耗(ego depletion)状態になって衝動的になったら危険な状況に対する脆弱性が高まっていると感じ、自己を防衛する行動にでるという研究(Lisjak & Lee, 2014)があるので、セルフコントロールが低下する=悪いことというイメージは一面的です。今回は直接的に自己制御を要求する課題を行ったわけではないと思いますが、セルフコントロールが苦手になるという点は自我消耗と共通しています。もっとも社交不安が高い人にとって社会的交流が自己制御を要求されることならば交流は自我消耗の誘発と同じことになりますので、その点に関するさらなる研究が必要です。

私が管理している別のブログ『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』における関連研究⇒自己制御のコスト(負の側面)
↑セルフコントロールにはダークサイド(負の側面)があるという研究です。具体的には自己制御能力が高い人に対する第三者の期待が高く、第三者は自己制御力が高い人に多くの仕事、過度に負担がかかる仕事をまかせ、自己制御力が高い人は心理的負担を高く感じているとの結果が得られています。自己制御力が高い人は恋人から頼られるのを負担に感じており、これが関係満足度を低下させているというお話もあります。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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