生花(華道)をした後に状態不安や呼吸数等が低下する | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)、実験方法、実験結果、ディスカッションの一部だけを読んだ不安(障害)の治療法に関する最新の論文を取り上げます。

なぜ不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併発していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害になりました。

今回は華道の生花をした後に特性不安が高い人の状態不安・不快感・呼吸数が低下し、特性不安が低い人と同等レベルになるという研究です。

生花には生け花、活花、活け花、いけばななど様々な表記がありますが、本記事では一部例外を除き生花に統一します。よく知りませんが、生花とフラワーアレンジメントは違うみたいですね。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒手を洗うと嗜好食品を選択するようになる
↑嗜好性の高い食物(hedonic food)を食べた後に手を洗うと罪悪感が低下するという結果も得られています。ダイエットするなら手洗いはしない方が良いですね(笑)

Homma, I., Oizumi, R., & Masaoka, Y. (2015). Effects of Practicing Ikebana on Anxiety and Respiration. Journal of Depression & Anxiety, 4:1000187. doi: 10.4172/2167-1044.1000187.

東京有明医療大学の本間生夫副学長(呼吸生理学・脳生理学)、いけばな草月教室?/いけばな草月流本部助手の大泉麗仁氏(いけばな作家)、昭和大学医学部生理学講座の政岡ゆり講師による論文です。

○方法

参加者は健康な女性10名(既婚3名,独身7名)。平均年齢は43.6±8.57(25~54歳)。彼女らは東京都目黒区のいけばな草月流教室で3~15年に渡り月2、3回の頻度で生花の稽古に励んでいました。

使用尺度・生理学的測定(生花実践の前後で計測)
・不安の評定:スピルバーガーの状態不安-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)
・快-不快(pleasantness-unpleasantness)の評定:使用尺度は視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale:VAS)
・呼吸数:3分間の胸壁の動き(腹囲長の変化)で評価。腹囲長の計測に呼吸ベルト?(respiratory belt)/延長ベルト(extension belt)を使用。

生花は稽古場で1時間実施。花の種類は生花インストラクターによって予め指定されていました。1時間の内、最初の30~45分間は生花に集中し、相談厳禁。その後の15分間はインストラクターに助言を求める時間でした。

○結果

特性不安得点45点以上を高不安群(6名)、45点未満を低不安群(4名)として分析しました。

全体的に生花をする前と比較して、生花をした後は状態不安が低下しました。低不安群では生花前後で状態不安の変化が有意でなかったのに対し、高不安群は生花の後に状態不安が低下しました。また、生花前では低不安群よりも高不安群の方が状態不安が高かったのですが、生花後には状態不安レベルの統計的な差が消失しました。

生花前、生花後の状態不安とVAS得点は負の相関関係(それぞれr=-0.9235,r=-0.7964)で、どちらも状態不安が高い人ほど不快感が高い(あるいは快適感が低い)ことが示されました。

生花前と比較して生花後は快適感が増しました(あるいは不快感が低下)。低不安群では生花前後で快-不快の変化が統計的に有意でなかったのに対し、高不安群では生花前よりも生花後の方が快適感が増加しました。また、生花前では低不安群よりも高不安群の方が不快感が高かったのですが、生花後では群間の有意差が検出されませんでした。

生花前では特性不安と呼吸数に正の相関関係が検出されましたが、生花後では有意になりませんでした(それぞれr=0.7298,r=0.3216)。

生花前よりも生花後の方が呼吸数が低くなりました。低不安群では生花前後で呼吸数の変化に有意差が検出されなかったのに対し、高不安群では生花前よりも生花後で呼吸数が低下しました。また、生花前では低不安群よりも高不安群の方が呼吸数が高かったのに対し、生花後では有意差が検出されませんでした。特性不安が高いほど生花前後の呼吸数の変化が激しくなりました。

○コメント

以上をまとめると、生花教室に通う女性は…

・生花の後に状態不安や呼吸数が低下し、快適感が増加(あるいは不快感が低下)するが、特性不安が高いグループだけ

・特性不安が高い集団の生花前の高い状態不安・不快感・呼吸数は、生花後に特性不安が低い集団と大差がなくなる


となります。論文中では研究の限界として追跡調査がされていないことと不安障害やパニック障害(パニック症)の患者への効果が検証されていないことがあげられていました。ただ、他にも様々な欠点があり、はっきりいって本研究のエビデンスの質は低いと言わざるを得ません。

まず、サンプルサイズが10人と少ないです。また、参加したのは女性だけで男性への効果は不明です。さらに、参加者は生花を3~15年学んでいた人達でした。もしまったくの初心者が生花をしたとしたら分からないことだらけですので、逆に不安が高まるかもしれません。また、参加者を生花をする群と生花以外の活動をするアクティブ統制群あるいは待機群にランダムに割り当てるRCT(ランダム化比較試験)ではなかったので、単なる時間経過で状態不安や不快感、呼吸数が低下したと考えることも可能です。時間経過に伴うリラックス効果を想定することもできます。要するに特性不安が高い人はリラックスするのに時間がかかるだけで、今回の研究結果は生花の効果でも何でもないという解釈が成立し得ます。

実験方法を読んだ限りでは生花は集団状況でしたような印象を受けます(私は論文全部を読んだのではなく、アブストラクト、方法、結果のすべてと考察の一部を読んだだけである点に注意)。実際、10名の参加者が連れていかれた稽古場には生花のテーブルが10台ありました。もし仮に集団状況での実験なら、個別に生花をしても同じ結果が再現できるかどうかが気になります。また、参加者は同じ生花スクールで稽古を受けていた人達だったので、知り合いの可能性があります。したがって、知り合いでない人達と一緒に生花をして同じ結果が再現できるかは不明です。

他にも生花教室に通っている女性が対象の研究なので、生花に興味がある人しか参加していなくて、彼女らは生花に興味がない人と特徴が違うのではないか?という疑い(サンプリングバイアスの問題)があります。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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