アロマフットマッサージで不安が低下するのは50歳未満だけ | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)、実験方法、実験結果、考察の一部だけを読んだ不安(障害)の治療法に関する最新の論文を取り上げます。

なぜ不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併発していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害になりました。

今回は、50歳未満の人はアロマフットマッサージで状態不安が低下するという研究です。健康関連QOLの心の健康が改善するという結果も得られています。また、収縮期血圧の低下効果も生じ、50歳以上だと拡張期血圧も低下しました。さらに、状態不安の低下が大きい人は収縮期血圧の低下も大きくなりました。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒夜更かしすると他者からのアドバイスに従順になる

Eguchi, E., Funakubo, N., Tomooka, K., Ohira, T., Ogino, K., & Tanigawa, T. (2016). The effects of aroma foot massage on blood pressure and anxiety in japanese community-dwelling men and women: a crossover randomized controlled trial. PLoS ONE, 11(3): e0151712. doi:10.1371/journal.pone.0151712.

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野の江口依里助教、舟久保徳美大学院生、荻野景規教授、順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学教室の友岡清秀氏、谷川武教授、福島県立医科大学医学部医学科疫学講座の大平哲也主任教授による共著論文です。厚生労働科学研究費補助金の助成を得て実施された研究です。

〇方法

愛媛県松山市近くに住む27~72歳の男女57人が参加(男性5人,女性52人)。平均年齢は48.9歳。群分けは以下の通りにランダムに実施(ただし、スケジュールが合わなかったなどの理由で、人数に若干の変動あり)。

・グループA:29人。最初に介入。4週間の介入終了後、介入なしの4週間を置く。

・グループB:28人。最初は介入なしで、4週間後から介入。

*この介入計画をクロスオーバーRCT(無作為化比較試験,Randomized Controlled Trial)といいます。クロスオーバーRCTとは、2群間で介入条件を交互に入れ替え、どちらの群も両方の介入条件を経験する臨床試験のことです。今回の介入条件はアロマフットマッサージ有りとアロマフットマッサージ無しです。また、性別、年齢、収縮期血圧は層別ランダム化しました。

アロマフットマッサージ介入は1週間に3回を4週間実施。施行場所は松山市の‎フィットネスクラブ。

アロマフットマッサージの方法:10分の足湯の後に45分間実施。インストラクターの指導の下で、参加者自身が行いました。まず、手にオイルを塗り、その香りを吸いました。次に脚にオイルを塗り、太ももからつま先までマッサージ。ツボの刺激も行いました。マッサージの後、5分間仰向けの姿勢でリラックス。室温38˚C、湿度65%で、水や生姜水の摂取が可能。用いたアロマオイルはラベンダー、カモミールローマン、サンダルウッド、イランイラン、マジョラムをホホバとブレンドして作製。ホホバはキャリアオイルとして使用。

*キャリアオイルとは、エッセンシャルオイルを希釈する植物油のことです。ベースオイルとも呼ばれるようです。エッセンシャルオイルとは、植物から抽出される芳香物質のことで、揮発性があります。精油とも呼ばれます。エッセンシャルオイルは肌にそのまま使うとトラブルのもととなるので、キャリアオイルで薄めるというわけです。

自動血圧計で収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数を計測。

使用尺度
・状態不安・精神的ストレス:新版状態-特性不安尺度日本語版(State-Trait Anxiety Inventory-Form JYZ,STAI-JYZ)
・健康関連QOL:8項目健康調査票短縮版(8-Item Short-Form Health Survey,SF-8)日本語版

〇結果

ベースラインではグループAとグループBの間に性別比、年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、アルコール摂取者の割合、喫煙者の割合、運動習慣のある人の割合、楽観、主観的ストレス、ストレス緩和方法の使用者の割合、睡眠満足感、状態不安得点、健康関連QOLに有意差が検出されず(ただし、心拍数はグループBの方が有意傾向で低く、健康関連QOLの日常精神的役割機能はグループAの方が有意傾向で低かったです)。

グループAでもグループBでも介入後に収縮期血圧・拡張期血圧が下がりました。具体的には、グループAで介入前の収縮期血圧が108.1 mmHg(ミリ水銀)だったのに対し、介入後では107.0 mmHgでした。グループBでは介入前が114.1 mmHg、介入後が110.0 mmHg。拡張期血圧ではグループAが介入前で69.2 mmHg、介入後で67.3 mmHg、グループBが介入前で70.5 mmHg、介入後で68.8 mmHgでした。ただし、拡張期血圧への影響は50歳以上でのみ有意で、50歳未満では検出されませんでした。

心拍数への影響は検出されませんでした。

状態不安は、グループAでもグループBでも介入後に低下しました。ただし、介入後に状態不安が低下したのは50歳未満の人達で、50歳以上の人達への影響は検出されませんでした。

不安がある人の割合も介入後に減少しました。具体的には、グループAで介入前に不安がある人の百分率が40.7%で、介入後が25.9%でした。グループBでは介入前が40.0%、介入後が16.7%。

*不安がある人の定義は、新版状態-特性不安尺度日本語版(STAI-JYZ)の状態不安得点が46点以上でした。これは先行研究で不安が低い状態を45点以下だとしていたためです。

介入前後でSTAI-JYZが3得点より低下した群(状態不安の低下が著しかった群)では、介入後に状態不安が低下した人ほど介入後に収縮期血圧が低下していました。

健康関連QOLの心の健康はグループAでもグループBでも介入後に改善しました。健康関連QOLの活力、精神的側面のQOLサマリースコア(Mental Component Summary score,MCS)への影響は有意傾向でした。なお、精神的側面のQOLサマリースコアとは、健康関連QOLの活力、社会生活機能、日常精神的役割機能、心の健康からなる合計得点のことです。健康関連QOLの他のドメインへの影響は検出されませんでした。

臨床試験中に副作用は生じませんでした。

〇コメント
 
以上をまとめると、4週間にわたるアロマフットマッサージ(1週間に3回)で

・収縮期血圧が低下

・50歳以上だと拡張期血圧が低下

・50歳未満だと状態不安が低下

・状態不安の低下が大きい人は収縮期血圧の低下も大きい

・健康関連QOLの心の健康が改善

となります。書きませんでしたが、アロマフットマッサージが状態不安に及ぼす影響は短期的なものでした。というのも、グループAにおいて不安がある人の割合は介入後に40.7%から25.9%に減少したものの、介入なしの4週間が経過した後にはまた40.7%に戻っていたからです。収縮期血圧や拡張期血圧でも同様に元に戻っていました。


先にも述べたように、本研究は厚生労働科学研究費補助金の支給もあって実施されたものです。国のお金が使われていたことは本研究成果が確からしいということの根拠にはなりませんが、「こんな研究にも国から研究費が交付されているんだ」と少し驚いたのも事実です。

アロマフットマッサージは血圧への効果が見いだされましたが、心拍数への影響は検出されませんでした。これは血圧への影響と心拍数への影響でメカニズムが異なるからなのか、それとも血圧より心拍数の方が効果がでるのにより多くの(あるいはより強い)アロマフットマッサージが必要なのか。少なくとも私には不明です。

女性が大多数というサンプルの偏りがありますが、そもそも男性がアロマフットマッサージにどの程度興味を持つのかという疑問があります。また、もしかしたら1週間に45分間のアロマフットマッサージを3回行う時間を確保するのが男性の方が難しいのかもしれません(労働市場がまだまだ男性社会だということが前提条件)。

過去には、生花教室に通う、特性不安が高い女性が生花をした後に、状態不安や呼吸数が低下し、快適感が増加(あるいは不快感が低下)したという先行研究(Homma et al., 2015)がありました。しかし、生花研究はRCTデザインではなかったため、本当に生花の効果か不明でした。一方、今回のアロマフットマッサージ研究はクロスオーバーRCTデザインという点が優れています。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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