嫌な人からの評価を考えると… | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は社会不安がある人(約12歳)が「嫌な人」からの評価を考えた時に脳がどのような活動をするのかという謎に挑んだ研究です。

Guyer, A. E., Lau, J. Y. F., McClure-Tone, E. B., Parrish, J., Shiffrin, N. D., Reynolds, R. C., Chen, G., Blair, R. J. R., Leibenluft, E., Fox, N., Ernst, M., Pine, D. S., & Nelson, E. E.(2008). Amygdala and ventrolateral prefrontal cortex function during anticipated peer evaluation in pediatric social anxiety. Archives of General Psychiatry, 65, 1303-1312.

★概要

社会的場面に不安がある人を対象とした研究です。不安群の選定方法が独特です。例えば、社会不安障害だけでなく、全般性不安障害と分離不安障害あるいはこれらの合併症も不安群に投入しています。過去に社会不安障害だったのに、現在はそうではない人が含まれることを示唆する記述がありますが、正確なことは分かりません。ただ、いずれも社会的場面に不安があることを尺度で確認しています。この不安群と精神疾患がない群を比較、検証しています。

○実験手順

①参加者と同年齢の人の笑顔が写っている写真を見せ、その人とチャットをしたいか尋ねる。この評定が写真に写っている人に伝えられることを参加者に報せる。

②2週間後、fMRIで脳活動をスキャンしている間に再び同じ写真を見せる。この時に、写真に写っている人が参加者自身とどのぐらいチャットをしたいと思っているか想像してもらう。

この実験では、2週間前にチャットをしたくないと答えた人からの評価(しっぺ返し・報復?)を考えている間、脳活動はどうなるのだろう?という疑問に挑んでいます。不安傾向がある人は一緒にチャットをしたくないと思った人からネガティブな評価を受けると考えてしまうという前提に立っています。いわゆる、「認知の歪み」というものを実験的に作り出したわけです。なお、写真は1枚だけではなく、複数枚見せます。

○結果

社会的場面に不安がある人はそうでない人と比較して、予想した他者からの評価は否定的なものでした。否定的な評価を予想した時に左右の扁桃体や小脳が活発になったのは不安群だけでした。右扁桃体の活動は左腹外側前頭前野の活動と同時に起こる傾向がありました。写っているのは笑顔なのに、不安障害の人はネガティブな評価を想像してしまい、扁桃体の活性が高まったと筆者らは考えています。

★コメント

通常、社会不安に関する研究は怒っている人の写真を見せたり、聴衆の前でスピーチをさせたりといった実験場面を設定することが多いです。しかし、今回は他者からの評価を考えさせ、その結果、笑顔の写真でも扁桃体が活発になったという点が独特です。結果としては、以前参加者自身が一緒にチャットしたくないと判断した人の笑顔の写真で扁桃体の賦活がみられました。不安傾向にある人はネガティブな評価が怖いのか、それとも写真に写っている人が嫌いなのか分かりませんが、客観的には正の社会的刺激(笑顔)でも頭の中の認知が負に判断してしまうことが判明しました。

12歳前後の人を対象とした研究なので、この結果が他の年齢層にも当てはまるかどうかは分かりません。12歳といえば、まだまだ社会的能力が発達途上にあると思われるので、その影響もあるかもしれません。また、参加者の性別やIQも偏っているように思われます。平均IQが110以上であったり女性が多かったりしています。この結果だけで、結論を出すのは慎んだ方がいいでしょう。

対人恐怖という言葉もある日本で同じ実験をすると、もっと差が現れるような気もします。そうなれば、他者からのネガティブな評価を考えてしまうことが不安障害の性質であるという説も説得力を増します。

2週間後でも脳の活動に差があったという点も興味深いです。2週間経つ前に、同じ写真を繰り返し見せて扁桃体の活動が弱化していくのか、あるいは2週間以上(1ヶ月、1年…)空けても扁桃体の活動が活発なままなのか気になります。

○実験に協力したのは社会不安障害の人だけではない。

尺度で不安群の社会不安が確かめられているものの、不安障害の範囲を広くとらえているので注意が必要です。たとえば全般性不安障害や社会不安障害、分離不安障害がいっしょくたにされています。これでは、特定の障害に関する詳細な情報を得ることができません。しかし、この欠点も見方次第で、強みともとれます。つまり、今回の方法で特定の不安障害というよりはより広範な不安障害の特質を明らかにすることができるからです。

○尺度について

Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders(SCARED)という不安尺度を用いているのですが、その集計方法が独特です。SCAREDを参加者とその親に回答してもらい、平均得点を算出しています。参加者と親の得点を平均していいものなのか。このような尺度の使い方が妥当なのか疑問です。しかし、私はSCAREDに詳しくないので、ただの戯言と思ってください。

○扁桃体・腹外側前頭前野以外

扁桃体や腹外側前頭前野以外にも不安群とそうでない群で反応が異なる脳部位が見出されたのですが、これらについてはまったく考察されていません。確かに、有意差が認められた全ての脳領域を先行研究と比較するのは無謀かもしれません。それに、今回の実験方法は過去に例がなく、比較、考察しづらいということもあるでしょう。しかし、考える手がかりとして考察は書いておいてほしいものです。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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