座位行動が不安を高める | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(抄録)だけを読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害になりました。

今回は、座位行動で不安が高まり、身体活動量を元に戻すと高まった不安が低下するという研究です。座位行動とは「座り過ぎ/座りすぎ」のことですが、横たわった状態である臥位も含む概念です。座位行動は座っているだけかというとそうでなくて、テレビを視聴する、インターネットをする、読書をする、座って行う仕事(例:デスクワーク)をするといった活動をしている最中でもエネルギー消費量が1.5メッツ以下ならば、座位行動に含まれます。

*追記(2016年8月1日):厳密にいうならば、座位行動の意味に「座りすぎ」という時間的側面は包含されておらず、単に座位や臥位でエネルギー消費量が低い状態を言いますが、分かりやすさを重視し、「座りすぎ」と説明しています。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒携帯電話での通話は喋らない方が楽しめる
最近の記事2⇒マジシャンは嘘のトリックを言って、手品の種が見破られるのを防ぐ
↑またしてもマジック心理学の登場です。マジックは人間の知覚や認知の機能を研究する上で重要なツールになっています。

Edwards, M. K., & Loprinzi, P. D. (2016). Experimentally increasing sedentary behavior results in increased anxiety in an active young adult population. Journal of Affective Disorders, 204, 166-173. doi:10.1016/j.jad.2016.06.045.

アメリカのミシシッピ大学健康運動科学レクリエーションマネジメント研究科身体活動疫学ラボの研究者2名による共著論文です。

○序論

座位行動が不安に与える影響は観察研究によるものが主です。そこで、本研究の目的はランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)で座位行動が不安症状に因果的に影響を及ぼしていることを直接実証することとしました。論文によると、この種のRCT研究は世界に類を見ないそうです。もう1回書きますが、座位行動とは簡単にいえば「座りすぎ」のことです。

○方法

自己申告と加速度計(加速度センサー)で身体活動量が1週間に150分はあると確認された人が実験に参加。参加者を以下の2群にランダムに割り当て。ちなみに、世界保健機関(WHO)や米国は成人の身体活動量として中強度以上(3メッツ以上)の身体活動を150分/週以上実施することを推奨しているそうですね。

・座位行動介入群(n=26):1週間運動を止めて、1日あたりの歩数を5000以下に抑える群
・統制群(n=13):普段の生活通り、身体活動量を1週間に150分以上を維持する群

両群ともに以下の尺度での評定を介入前後に実施。ただし、介入群は、介入終了後、身体活動量を元に戻し、1週間経ってからもう一度質問紙に回答。
・不安の重症度と生活障害の全般尺度(Overall Anxiety Severity and Impairment Scale,OASIS)

○結果

介入群で身体活動量を制限してから1週間後の不安レベルが上昇していました。また、介入群が身体活動量を元に戻してから1週間後には、不安レベルが低下しました。

○コメント

本研究は座位行動が不安を高めるという因果関係が存在することを実験的に示唆した内容で、大変興味深いです。しかも、身体活動量を元に戻してから1週間後には、高まった不安レベルが低下したのですから、ほえ~となってしまいます。

1週間身体を動かさないだけで不安が高まるという本研究成果はあくまでも、普段の身体活動量が1週間に150分はある人が対象で、それ以外の人への効果は不明です。サンプルも少ないですし、一般化には気を付けたいものです。ただ、運動を1回するだけでも、状態不安が少し低下するというRCTのメタ分析(メタ解析)研究(Ensari et al., 2015)や定期的に運動する人はTwitterで不安や抑うつを表出するツイートが少ない(Reis & Culotta, 2015)といった研究の存在を踏まえると、運動と不安の関係は見過ごせないです。

座位行動は病気や死亡のリスクだというお話と切っても切り離せない関係にあるので、そのことについて蛇足ながら触れておきましょう。身体活動量を調整しても、座っている時間が長いと全死因死亡リスク、循環器疾患が死因の死亡リスク、循環器疾患の罹患リスク、癌が死因の死亡リスク、癌の罹患リスク、2型糖尿病の罹患リスクが高いという系統的レビュー+メタ分析研究があります(Biswas et al., 2015)。もっとも、身体活動量が少ない方が座っている時間が長いと様々なリスクが高いようですが。そういえば、中等度身体活動を1日60~75分行っている人では、座位時間が長くても死亡リスクは高くならないというメタ分析研究が医学雑誌『ランセット』にオンライン公開されましたね(Ekelund et al., in press)。もっとも、この程度の身体活動量ではテレビ視聴時間が長いことによる死亡リスクを完全に無くすことはできないようですが。

○引用文献(アブストラクトだけ読みました)
Biswas, A., Oh, P. I., Faulkner, G. E., Bajaj, R. R., Silver, M. A., Mitchell, M. S., & Alter, D. A. (2015). Sedentary time and its association with risk for disease incidence, mortality, and hospitalization in adults: a systematic review and meta-analysis. Annals of Internal Medicine, 162(2), 123-132. doi:10.7326/M14-1651.

Ekelund, U., Steene-Johannessen, J., Brown, W. J., Fagerland, M. W., Owen, N., Powell, K. E., Bauman, A., & Lee, I-M. (in press). Does physical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women. Lancet, doi:10.1016/S0140-6736(16)30370-1.

Reis, V. L. D,, & Culotta, A. (2015, January). Using matched samples to estimate the effects of exercise on mental health from Twitter. Poster presented at Proceedings of the Twenty-Ninth AAAI Conference on Artificial Intelligence. Hyatt Regency in Austin, TX.182-188. <http://www.cs.iit.edu/~culotta/pubs/virgile15using.pdf>

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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