緘動タイプへの支援にはイジメ・不登校への対応、発話練習が多い | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

担任が場面緘黙児を認知するきっかけや場面緘黙児のタイプごとの教育支援の内容等を調査した研究があります。本研究は2016年10月8日~10日にサンポートホール高松・かがわ国際会議場を会場とした日本教育心理学会第58回総会(担当校:香川大学)でポスター発表されます。神戸国際大学の成瀬智仁さんが発表者です。

成瀬智仁(2016). 緘黙児童に対する小学校教員の教育援助について(2) ―緘黙類型と小学校教員の援助の課題― 日本教育心理学会第58回総会発表論文集, 370.

なお、成瀬氏は2015年に開催された日本教育心理学会第57回総会でも場面緘黙症に関するポスター発表をされており、その論題が『緘黙児童に対する小学校教員の教育援助について ―緘黙症状の類型と小学校教員のかかわり―』でした。ポスター発表のタイトルを見る限り、今回はリンク先の研究の続編とみることが可能です。また、成瀬氏は2014年開催の日本教育心理学会第56回総会でも「緘黙生徒に対する高校教員の指導意識について -緘黙についての理解と指導意識の類型-」というポスター発表をされています。

○調査対象者

A市公立小学校24校の教員に対して質問紙調査(有効回収率61.7%)。ここでの教員とは教諭・講師のことです。337名の教員が協力(女性232名、男性105名)。平均年齢40.1歳(SD=13.10)。

○結果

担任教諭239クラスの児童総数は6806名。内、場面緘黙児は34名(女子21名、男子13名)。緘黙女子21人中4名が支援学級在籍児、17名は普通学級在籍児。緘黙男子13名中2名が支援学級在籍児、11名が普通学級在籍児。緘黙児の比率は0.5%。緘黙女子が61.8%、緘黙男子が38.2%。緘黙児を担任した過去のケースも含めると?、緘黙児が165事例(女子104名,63.0%、男子61名,37.0%)。

「担任が緘黙児を認知するきっかけは,1年生は保護者と前の機関(保育所・幼稚園)からの連絡が多く,2年生以降は前担任からの引き継ぎが多かった」。「低学年では担任の気付きも多く,5・6年になってからも新たに認知されるケースも見られた」。

担任の指導内容は「保護者連携」、「クラス活動」、「友達作り」、「学習指導」、「学校行事」が多くなりました。

小学校教員の視点から、場面緘黙児の特性には「動作表現」と「言語表現」の2成分があり、それに基づき、場面緘黙児のタイプ分けをすると、ほとんど話さない「緘黙タイプ」、動かない「緘動タイプ」、話も行動も控えめな「消極タイプ」、少し話せて行動は出来る「寡黙タイプ」という4類型ができるという先行研究がありました(詳しくは「緘黙の4類型で緘動タイプは高学年ほど多くなる」を参考のこと)。この4類型毎に担任の指導・支援内容を分析したところ、以下の結果が得られました(不等号の右側よりも左側の方が頻度が多いという意味です)。

・「友達作り」:緘動タイプ・消極タイプ・緘黙タイプ>寡黙タイプ
・「発話練習」:消極タイプ・緘動タイプ>緘黙タイプ・寡黙タイプ
・「イジメ対応」:緘動タイプ>消極タイプ・緘黙タイプ・寡黙タイプ
・「不登校対応」:緘動タイプ>消極タイプ・緘黙タイプ・寡黙タイプ

緘黙児が改善しないのは、消極タイプや寡黙タイプよりも緘黙タイプや緘動タイプでした。緘黙タイプや緘動タイプよりも、消極タイプや寡黙タイプの方が「友達作り」「クラス活動」の指導により、改善しやすかったようです。教員の「緘黙児指導の自信」は、寡黙タイプよりも緘黙タイプ・緘動タイプの方が低い結果となりました。

○コメント

5・6年になってから緘黙児を新たに認知するケースがあったとのことですが、これだけでは高学年になってから緘黙症を発症したのか、それとも前々から緘黙症状があったが5・6年生になって初めて認知されたのかが不明です。前担任からの引継が上手くいっていない場合や高学年になって引っ越して、転校先で緘黙児であると認知された可能性もあります。仮に引っ越し後に担任に場面緘黙症を認知されたケースがあったとしたら、以前の学校でも緘黙症状があったかどうか気になるところです。

「友達作り」という支援内容ですが、私も受けた記憶があります。ただ、これは引っ越し前の話で、緘黙状態に対する支援かどうかは分かりません(私は引っ越し後に場面緘黙症状を呈したのですが、それ以前から緘黙症状があったかどうか記憶が曖昧です)。実は私が他の生徒にちょっかいを出したことがきっかけで先生主導による「友達作り」が進んだのですが、ちょっかいの内容は話すことが必要ないもの(無言のちょっかい)で、以前から緘黙症状があった可能性もあります。

参考記事⇒緘黙人生

緘動タイプの方が「発話練習」が多くなるとは意外でした。高学年ほど緘動タイプが多くなるとされる(成瀬, 2015)ので、もしかしたら年齢/学年による交絡バイアスがあるのかもしれませんが。

緘動タイプで「イジメ対応」や「不登校対応」が多くなるというのも、少なくとも私には新発見です。ほとんど動かない(動けない)からいじめを受けやすく、結果として「イジメ対応」が多くなるのか。緘動症状があると場面緘黙症状もそれだけ重篤で、不登校になりやすく、結果として「不登校対応」が多くなるのか。それとも、いじめを受けたから緘動がでるようになったのか。いじめで場面緘黙症が重症化してしまうのか。よく分からないことだらけです。なお、私の場合は小学5年か6年の時に、下級生からいじめのようなことをされたことがあるのですが、別に先生が対応するようなことはありませんでしたし、私自身も先生が介入するほど重篤ないじめだとも思っていませんでした。

場面緘黙症のタイプ分けはそれはそれで興味深いのですが、緘黙類型は固定化されているものなのかな?という疑問も浮かびます。たとえば、追跡調査をすると、緘黙タイプが緘動タイプに移行することはないのか?という点が気になります。緘黙症状は環境要因の影響を受けるとするならば、環境が変われば、個人内でも緘黙類型が変化する可能性があるかもしれません。

なお、本ポスター発表は以下のURLから閲覧可能です。2種類ありますが、2つ目の方が表が添付されているので、そちらをお勧めします。

○引用URL(2016年9月23日現在)
成瀬智仁(2016). 緘黙児童に対する小学校教員の教育援助について(2) ―緘黙類型と小学校教員の援助の課題― 日本教育心理学会第58回総会発表論文集, 370.
https://confit.atlas.jp/guide/event/edupsych2016/subject/PC64/advanced
https://confit.atlas.jp/guide/event-img/edupsych2016/PC64/public/pdf?type=in

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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