不安は認知症のリスク | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、論文アブストラクト(抄録)だけを読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害になりました。

今回は不安は認知症のリスクという研究です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒幸せ全開の人は交渉事で搾取されやすい
最近の記事2⇒透明身体錯覚でも、身体サイズの錯覚が物体の大きさ知覚に影響する
↑2つ目の記事で紹介した研究の意味するところは、「身体の大きさ知覚が世界の見方に影響するのに、身体(の一部)が目に見えると感じられる必要はない」ということです。

Petkus, A. J., Reynolds, C. A., Wetherell, J. L., Kremen, W. S., Pedersen, N. L., & Gatz, M. (2016). Anxiety is associated with increased risk of dementia in older Swedish twins. Alzheimer's & Dementia, 12(4), 399-406. doi:10.1016/j.jalz.2015.09.008.

アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市の南カリフォルニア大学心理学研究科、カリフォルニア大学リバーサイド校心理学研究科、カリフォルニア大学サンディエゴ校精神医学研究科、退役軍人サンディエゴヘルスケアシステム心理サービス部門、退役軍人ストレスメンタルヘルス研究拠点(VA Center of Excellence for Stress and Mental Health)、スウェーデンストックホルムのカロリンスカ研究所医学的疫学生物統計学研究科の研究者による論文です。

〇方法

スウェーデン養子/双生児加齢研究(Swedish Adoption/Twin Study of Aging,SATSA)に登録された認知症でない双子(n = 1082)が、1984年に不安症状を評定。さらに、その後の28年間を追跡。

〇結果

抑うつ症状とは独立して、ベースラインの不安症状が高いと、追跡後に認知症発症リスクが高くなりました(ハザード比[HR] = 1.04; 95%信頼区間[CI] = 1.01–1.06)。不安が高くない人と比較して不安が高い人は認知症発症リスクが48%高くなりました。双子で比較すると、一卵性双生児(HR = 1.06; 95%CI = 0.95–1.20)よりも二卵性双生児の方(HR = 1.11; 95% CI = 1.02–1.20)が不安症状と認知症の関係が強く、認知症と不安症状に共通の遺伝因子が関わっている可能性があるとのことです(いやそれだったら一卵性双生児の方が関係が強くなるはずだと思いますが、この辺りのロジックがよく分かりませんでした)。

〇コメント

不安が認知症のリスクとは、場面緘黙症という不安障害を経験したことのある人には恐ろしい話かもしれません。認知症って高齢者の話だから、幼少期の発症が多い場面緘黙症とは関係ないんじゃないの?と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、真偽のほどは私には判断できませんが、アルツハイマー病なんかは幼少期(胎児期含む)の経験がリスク要因として蓄積すると、エピジェネティクスを介してアルツハイマー病病理につながる可能性を指摘する研究者もいるようです(Ripoli, in press)。ただ、この説のリスク要因に幼少期の不安が入るかどうかは知りませんが。また、たとえ場面緘黙症を克服したとしても、不安を感じやすい気質や性格が高齢になるまで持続することもあり得ます。

ただ、高不安薬として使用されることのあるSSRIs(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も認知症リスクであるという研究(Lee et al., 2016)があるので、このあたりの交絡の影響はどうなのかなと思います。ちなみにLee et al.(2016)によると、高不安作用のあるモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOIs)や四環系抗うつ薬、あるいはその他の抗うつ薬も認知症リスクで、三環系抗うつ薬の服用は逆に認知症リスクの低さと関連するのだとか。

なお、認知症の診断を受ける前の3年間にわたって抗うつ薬を使用していた認知症、アルツハイマー病患者は死亡リスクが低いという研究発表もあります(Enache et al., 2016)。

〇引用文献一覧(アブストラクトだけ読みました)
Enache, D., Fereshtehnejad, S. M., Cermakova, P., Garcia-Ptacek, S., Kåreholt, I., Johnell, K., Religa, D., Jelic, V., Winblad, B., Ballard, C., Aarsland, D., Fastbom, J., & Eriksdotter, M. (2016). Antidepressants and mortality risk in a dementia cohort–data from SveDem, the Swedish Dementia Registry. European Psychiatry, 33, S85. doi:10.1016/j.eurpsy.2016.01.039.

Lee, C. W. S., Lin, C. L., Sung, F. C., Liang, J. A., & Kao, C. H. (2016). Antidepressant treatment and risk of dementia: a population-based, retrospective case-control study. Journal of Clinical Psychiatry, 77(1), 117-122. doi: 10.4088/JCP.14m09580.

Ripoli, C. (in press). Engrampigenetics: Epigenetics of engram memory cells. Behavioural Brain Research, doi:10.1016/j.bbr.2016.11.043.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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