嫌悪の表情を見ている時の前帯状回 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は社会不安障害の人が嫌悪の表情を見ると前帯状回という脳領域が活性化するというお話です。なお、前帯状回は情動情報の処理に関わっています。

Amir, N., Klumpp, H., Elias, J., Bedwell, J. S., Yanasak, N., & Miller, L. S.(2005). Increased activation of the anterior cingulate cortex during processing of disgust faces in individuals with social phobia. Biological Psychiatry, 57, 975-981.

★概要

他者の前で話したり、なにかをしたりすることだけでなく、ほとんどの社会的場面を恐れる全般性社会不安障害を対象とした研究です。心身の疾患がない人を含む参加者に他者の顔を見せ、その間の脳活動を前帯状回に焦点をあてて探っています。他者の顔には嫌悪を露わにした表情と無表情という2種類の刺激を用いています。

その結果、全般性社会不安障害の人はそうでない人と比較して嫌悪の表情に対する前帯状回の活動が増加しました。その他、全般性社会不安障害の人の方が嫌悪の表情を不快だと迅速に判断し、無表情を否定的にとらえる傾向にあることが示されました。

★コメント

不快な表情を見ている時に全般性社会不安障害の人は前帯状回が活発に働くことを示唆した研究です。前帯状回は情動情報の処理に関与しています。

SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)を服用していた患者がいるなどサンプルに問題はあります。とはいえ、従来焦点となっていた扁桃体ではなく前帯状回に目を向けた意義は大きいでしょう。

○実験手順について

上述しませんでしたが、顔刺激のセットを変えて3回実験しています。しかし、社会不安障害の人で前帯状回が活発になったのは2回でした。筆者らは先行研究をあげながら、これは前帯状回の「慣れ」のためであると主張しています。

しかし、実験手続きにも問題があった感も否めません。嫌悪表情と無表情の呈示は別々のブロック単位でまとめて行っています。さらに、各々のブロックの間に顔刺激を呈示しない時間を設けています。したがって、勘の鋭い参加者はブロックの最初の方で「ああ、このブロックは嫌悪表情(無表情)だな」と予測がついてしまいます。その結果、前帯状回の賦活を抽出し難くなったと考えられます。予測がつくと前帯状回の慣れが速くなると考えてもいいでしょう。

しかし、ブロック単位ではなくランダムに呈示すると、両刺激の効果が混在してしまいデータの妥当性が失われてしまいます。刺激を呈示した後、脳活動が標準状態に戻るのに時間を要しますから、2種類の刺激を混在させるとどうしても高速撮像(スキャン)が出来なくなってしまいます。

○前帯状回に関する先行研究

私が読んだかぎりでは、認知行動療法や薬物療法で社会不安の症状が減退した場合、前帯状回の脳血流も減少したとの報告(Furmark et al., 2002)があります。しかし、背側前帯状皮質に関しては、人前でのスピーチを予期している時に全般性社会不安障害の人の活動が減少したとの報告もあります(Lorberbaum et al., 2004)。しかし、この2つの研究は単純に比較できません。前者はスピーチをしている間、後者はスピーチ待ちの状態の脳活動を調べています。今回読んだ論文では嫌悪表情を見ている間なので、むしろ前者の研究に近そうです。スピーチを予測している時には前帯状回は活動が低下するのでしょうか?

同じ前帯状回でもその区画の詳細な場所(背側?腹側?吻部?後部?)や実験手続き、実験条件、刺激によって反応が異なるのでしょう。あるいは他の脳部位に血流が偏りすぎて前帯状回の反応が検出できないといった問題もあるかもしれません。

○引用文献

Furmark, T., Tillfors, M., Marteinsdottir, I., Fischer, H., Pissiota, A., Långström, B., & Fredrikson, M.(2002). Common changes in cerebral blood flow in patients with social phobia treated with citalopram or cognitive-behavioral therapy. Archives of General Psychiatry, 59, 425-433.

Lorberbaum, J. P., Kose, S., Johnson, M. R., Arana, G. W., Sullivan, L. K., Hamner, M. B., Ballenger, J. C., Lydiard, R. B., Brodrick, P. S., Bohning, D. E., George, M. S.(2004). Neural correlates of speech anticipatory anxiety in generalized social phobia. Neuroreport, 15(18), 2701-2705.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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