作業記憶の訓練後の不安の低下は認知行動療法と遜色ない | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけを読むつもりだった不安(障害)の治療法に関する最新の論文を取り上げます。「読むつもり」という表現なので、全文読んでしまったことをお察しください。はあ、目が痛い。

なぜ不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害になりました。

今回は、ワーキングメモリ(作動記憶/作業記憶)の訓練後の不安の低下は認知行動療法の後の不安の低下と遜色ないという研究です。ワーキングメモリの訓練でも認知行動療法でも、継続的にセッションに参加した後に抑制制御力が改善し、注意バイアスが低下したとの結果も得られています。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

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Hadwin, J. A., & Richards, H. J. (2016). Working memory training and CBT reduces anxiety symptoms and attentional biases to threat: A preliminary study. Frontiers in Psychology: Psychopathology, 7:47. doi: 10.3389/fpsyg.2016.00047.

イギリスのサウサンプトン大学心理学部発達脳-行動研究室(ラボ)の研究者2名による共著論文です。

〇序論と目的

不安の理論フレームワークでは注意制御能力の低さが不安感情の発生や維持の認知メカニズムであるとされ、この理論を支持するエビデンスも得られつつあります。注意制御力の低さへの直接的介入法として注意バイアス修正訓練があります。また、ワーキングメモリ(Working Memory,WM)力を増強させる訓練を通して注意制御力、ひいては精神病理症状を改善させる試みもされています。WMの訓練(に伴う注意制御力の向上)を通して、改善できる症状の候補として、論文ではADHDの児童青年の不注意症状、多動性、反抗行動があげられています。

なお、前頭前野によって担われるWMの中央実行系が注意制御を支えるとされています。

以上の知見を踏まえると、WMの訓練(に伴う注意制御力の向上)によって、不安症状が改善することが理論的に予想され、本研究はその点を検証した文献です。対象としたのは不安が高く注意制御力が低い青年です。

〇方法

参加者はイギリスの中等学校に通う11~14歳の青年40人(男性10人,平均年齢13歳,白人36人・アジア人1人・混血人種3人)。特別支援教育を受けている中学生は除外。彼らは全員不安が高く、注意制御力が優れていませんでした。具体的なスクリーニング手続きとしては、当該生徒の年齢、性別の標準の平均よりも不安が高く、n = 640のサンプルの中央値以下の注意制御力を示した青年だけしか参加しませんでした。不安や注意制御能力の評定は以下の質問紙によりました。

使用質問紙一覧(両方とも本人が回答する自記式)
・スペンス児童用不安尺度(Spence Children’s Anxiety Scale,SCAS)の全般性不安障害症状を測る下位尺度の質問6項目で不安を評定。クロンバックのα係数は0.84。
・前青年期気質質問紙改訂版(Early Adolescent Temperament Questionnaire Revised,EATQ-R)の注意に関する下位尺度の質問7項目と学校・家でのWMを評定する質問項目2つで注意制御力を評定。クロンバックのα係数は0.73。

アウトカム指標一覧(検査時期は介入前、介入後から3週間以内、介入終了から3~4か月以内の3回)
・WM:近転移のWMと遠転移のWMを評定。近転移とは、介入で使ったWM課題と似たWM課題にどれだけ訓練効果が認められるかという意味です。遠転移とは、介入で使ったWM課題との類似性が低いWM課題にどれだけ訓練効果が認められるかという意味です。近転移課題は、児童用ワーキングメモリテストバッテリー(Working Memory Test Battery for Children,WMTB-C)の逆唱(backward digit recall)とブロック再生(block recall)の逆向版を用い、それらの合成得点で定量化。これで言語性WMと空間性WMが同時に測れます。遠転移課題は、コンピュータを用いた2-back課題の言語版と空間版を用い、それらの合成得点で定量化。
・特性不安:児童顕在性不安検査改訂版(Revised Children’s Manifest Anxiety Scale,RCMAS)第2版の総得点で定量化。RCMASで生理的不安、心配、社交不安を測ることが可能です。クロンバックのα係数は介入前で0.90。
・テスト不安:児童用テスト不安尺度(Children's Test Anxiety Scale,CTAS)の総得点で評価。CTASで試験を受けることに伴う心配や生理的変化、行動を測ることができます。
・抑制制御:コンピュータを用いたストループ・カラーワード・テストで評価。単語の意味とフォントカラーが同じ一致試行、単語の意味とフォントカラーが違う不一致試行、XXXXXのようなXsの文字列をカラーで呈示した中性試行の3種類で、ストループ干渉得点を算出。ストループ干渉得点とは、不一致試行の平均反応時間から一致試行の平均反応時間を引き算した値のことで、この得点が大きいほど、ストループ効果が大きいと判断しました。
・脅威への注意バイアス:コンピュータを用いたドット・プローブ課題で評価。ここでのドット・プローブ課題とは、以前に顔刺激が提示された場所2か所のうち、いずれか片方に小さなドットを提示し、そのドットの向きが水平だったのか垂直だったのか素早く答える課題のこと。顔刺激の表情は怒りと無表情(中性顔)の2種類。提示する顔のペアは怒り顔-中性顔と中性顔-中性顔の2種類。怒り顔-中性顔でドットが怒り顔が呈示された位置と同じ場所に呈示される一致試行、怒り顔-中性顔でドットが中性顔が呈示された位置と同じ場所に呈示される不一致試行、中性顔-中性顔を提示し、ドットの呈示位置を問わない中性試行の3種類。注意バイアス得点は、不一致試行の平均反応時間から一致試行の平均反応時間を引き算して算出。この得点が正の数だと脅威への注意バイアスが強いことを意味し、負の数だと脅威から注意を逸らすバイアスが強いことを意味します。0に近い得点だと、注意が怒り表情の影響を受けにくいことを意味します。

これらとは別に全検査知能指数(full scale Intelligence Quotient,full scale IQ)を介入前に評価。ウェクスラー知能検査短縮版(Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence,WASI)の行列推理(matrix reasoning)と語彙力のテストを実施。

WM訓練群、アクティブ統制群の割り当てはランダマイズ(不安レベルはペアでマッチング)。アクティブ統制群として認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy,CBT)群を使用。WM訓練完遂群(13人)の平均年齢は13歳0ヶ月で、男児2名。CBT完遂群(19人)の平均年齢は12歳11ヶ月で、男児6名。

・WM訓練群:Cogmed RMという就学児童生徒向けのWM訓練ソフトを使用。毎週5日間を5週間行う25セッション。1セッションにかかる時間は30~45分。視空間性WMと言語性WMを訓練。難易度(記憶項目数)は試行ごとに調整。訓練期間中の進捗状況をフィードバック。参加者数は20人でしたが、きちんと訓練していたと判断されたのは13人。きちんと訓練していたかどうかの判断基準は、8週間以内に最低でも20セッション完遂したかどうか。
・CBT群:FRIENDS for Lifeというレジリエンスを高めるためのCBTプログラムを適用。毎週2回行う1セッション1時間のCBTを10セッション、5週間かけて実施。参加者数は20人でしたが、1人はスケジュール調整が難しかったため19人に。

〇結果

WM訓練のコンプライアンスを遵守した人は13人(男児2人)で、平均年齢は13歳。コンプライアンスを遵守しなかった人は7人(男児2人)で、平均年齢は13歳1ヶ月。介入前のIQが非コンプライアンス群よりもコンプライアンス(訓練完遂)群の方が高くなりました。具体的には、非コンプライアンス群で平均IQは92.29(範囲 = 86–99,SD = 5.02)だったのに対して、訓練完遂群の平均IQは100.08(範囲:88–108,SD = 5.91)でした。

介入前ではWM訓練群とCBT群の間に、IQやWMの近転移課題・遠転移課題の成績、特性不安・テスト不安、ストループ干渉得点、注意バイアスに有意差は検出されませんでした。

介入前でIQがWMの近転移課題の成績(r = 0.47)や遠転移課題の成績(r = 0.37)と正の相関関係を示しました。そこで、WMへの影響を検討する際にはIQを共変量として統制しました。その結果、WMの近転移課題において、CBT群よりもWM群の方が正解率が高くなりました。これは介入後から3週間以内でも介入終了から3~4か月以内でも同様で、CBT群よりもWM群の方が成績が高くなりました。

WMの遠転移課題においては、WM群とCBT群の間に有意差が検出されませんでした。時間の主効果や群×時間の交互作用も有意ではありませんでした。

児童顕在性不安検査改訂版(RCMAS)第2版の総得点においては、群(WM訓練 or CBT)の主効果も調査時期ごとの群の違い(交互作用)も有意でありませんでした。しかし、介入前の特性不安と比較して、介入後から3週間以内と介入終了から3~4か月以内で特性不安が低下していました。

テスト不安においては、介入前と比較して、介入終了から3~4か月以内の方がテスト不安が低くなっていました。介入前と介入後から3週間以内、介入後から3週間以内と介入終了から3~4か月以内では有意差が検出されませんでした。群の主効果は検出されませんでしたが、群×時間の交互作用が有意傾向で、WM訓練群において、介入前や介入後から3週間以内よりも介入終了から3~4か月以内の方がテスト不安が低くなりました。

ストループ課題においては、介入開始前で、反応時間が長かった順に不一致試行>中性試行>一致試行でした(一致効果,congruency effect)。ストループ干渉得点は群の主効果、群×時間の交互作用ともに検出されませんでした。しかし、介入前よりも介入後から3週間以内や介入終了から3~4か月以内で干渉効果が低くなりました。

ドット・プローブ課題においては、介入開始前で、試行の種類による反応時間の差が有意ではありませんでした。群の主効果、時間の主効果、群×時間の交互作用も有意ではありませんでした。しかし、介入前の注意バイアス得点によれば、脅威(怒り顔)に注意が向かうタイプ(15人)と、脅威から注意を逸らすタイプ(17人)がありました。これらをさらにWM訓練群、CBT群に分けるとサンプルサイズが小さくなるため、WM訓練群+CBT群と合算して注意バイアスの種類ごとに分析しました。その結果、介入前のベースラインで脅威に注意を向けるバイアスを示した群は、介入後から3週間以内で注意バイアスが検出されず、介入終了から3~4か月以内で脅威から注意を逸らすバイアスが有意傾向で高くなりました。一方、ベースラインで脅威から注意を逸らすバイアスが強かった群は、介入後から3週間以内と介入終了から3~4か月以内での検査で注意バイアスが消失しました。

これらは最低限のセッション数を完遂した人だけで解析した結果です。必要セッション数を完了しなかった人(≒ドロップアウト者)も含めた統計解析を、治療の意図による分析(Intention-To-Treat analysis ,ITT分析)という方法で実施しても結果は変わりませんでした。

〇コメント

以上をまとめると、不安が高く注意制御力が特別優れていない11~14歳の青年において、

・ワーキングメモリ(WM)訓練を継続できなかった群(≒ドロップアウト群)と比較して、WM訓練を継続できた群は介入前のIQが高かった

・IQを統制しても、認知行動療法(CBT)群よりもWM群の方が、訓練で用いたWM課題と似たWM課題(近転移課題)の成績が向上。これは介入後から3週間以内でも介入終了から3~4か月以内でも同様。ただし、訓練課題との類似性が低いWM課題(遠転移課題)では、CBT群よりWM群の方が優れていることはありませんでした(時間の主効果がなかったことから、全体的にも遠転移課題の成績は改善したとは言えませんでした)。

・特性不安については、CBT群でもWM群でも、介入前と比較して、介入後から3週間以内と介入終了から3~4か月以内で特性不安の軽快が生じました。特性不安の低下の程度が群により違うとは言えませんでした。

・テスト不安については、CBT群・WM群で全体的に、介入前と比較して、介入終了から3~4か月以内の方が低くなっていました。特に、WM訓練を受けると、介入終了から3~4か月以内(追跡後)のテスト不安が低くなる傾向にありました。

・ストループ課題については、介入前よりも介入後から3週間以内や介入終了から3~4か月以内で抑制制御力が高くなりました。この抑制制御力の向上の程度はCBT群とWM訓練群で有意に異なりませんでした。

・ドット・プローブ課題については、WM訓練群+CBT群で全体的に、脅威への注意バイアスが弱まりました。具体的には、ベースラインで脅威(怒り顔)に注意を向けるバイアスを示した群も脅威から注意を逸らすバイアスが強かった群も、介入後から3週間以内で注意バイアスが消失しました。追跡後は脅威から注意を逸らすバイアスが強かった群で注意バイアスが検出されず、脅威に注意を向けるバイアスを示した群では脅威から注意を逸らすバイアスが強くなる傾向にありました。

ただ、WM訓練には継続が難しいという欠点がありました。CBT群でドロップアウトしたのは20人中1人でしたが、WM訓練群では20人中7人が訓練を持続することができませんでした。特にIQが低い人はWM訓練の継続が困難でした。
なお、WM訓練完遂群とCBT完遂群の間の介入前のIQ、WMの近転移課題・遠転移課題の成績、特性不安・テスト不安、ストループ干渉得点、注意バイアスに有意差は検出されていませんでした。また、論文の考察(ディスカッション)部では、これはあくまでも特性不安の低下であり、状態不安への影響は検出されなかったとの記述があります。抑うつや学績への影響はCBT群でもWM訓練群でもポジティブな結果が得られたそうです。このあたりは補足分析だということになっており、詳述されていませんでした。

先行研究では、不安障害児の脅威刺激への注意バイアスが、認知行動療法の後に症状が改善した群で減少したという報告(Legerstee et al., 2010)がありました。今回はワーキングメモリの訓練でも注意バイアスが低下することを示唆するもので、新しい知見になります。

〇批判・疑問点・弱点(逆に言えばこれらを克服すれば、さらに質の高い研究が可能に)

果たして本研究でCBTやWM訓練で特性不安やテスト不安が低下した、ストループ課題の干渉効果を指標とした抑制制御力が向上した、ドット・プローブ課題での注意バイアスが低下したといえるのか?本研究では待機群等の受動的(パッシブ)統制群を設けていなかったため、単に時間経過でこれらの変化が生じたと解釈することが可能です。待機群を比較対照として、不安障害への心理療法の効果を検討するのは不適切だとする研究者もいる(Patterson et al., 2016)とはいえ、重大な倫理的問題が生じない限り、私的には待機群等との対照研究は必要だと考えます。

本論文はあくまでも,、不安が高い青年のなかでも注意制御力が優秀でない子が対象の研究で、注意制御力が高い場合に同様の結果が得られる保証はありません。不安障害の人への効果も不明です。参加者40人中(脱落者含む)、男性が10人と女性が比較的多いのも般化可能性を低下させます。

追跡期間は最大で4カ月までであり、それ以降については不明です。不安障害の小学生が認知行動療法を受けても受けなくても8年後に不安障害の診断が50%の確率で消失するのは変わらないという報告(Adler Nevo et al., 2014)もあり、ワーキングメモリの訓練効果も年単位で検証する必要があります。

WM訓練はコンピュータソフトを用いて行っていました。対して、CBTは(私の勘違いでなければ、)コンピュータソフトを用いず、4~6人の小集団で行っていました。素人考えですが、どうせならCBTもコンピュータを用いて共通にした方が良いのでは?という疑問を持ちました。なお、本研究で用いたWM訓練に社会的要素が全くないと言えば嘘になります。というのも、コーチが1週間に2回以上、参加者に会ってフィードバックを与え、モチベーションアップを図っていたからです。モチベーションといえば、WM訓練群もCBT群も1セッション参加するごとにお金がもらえ、全てのセッションを完遂した暁にはさらに特別ボーナスが支給されていました。

医療研究デザインについて専門的に勉強したことがないので、よく分からないのですが、本論文はいわゆる非劣性試験(Non-Inferiority Trials,NIT)で検討すべき研究課題でもあるのかなと思いました。非劣性試験とは、今回の例で言えば、ワーキングメモリ訓練の効果が認知行動療法の効果よりも劣らないかどうかを検証する時に用いる研究デザインのことです。

〇発展的考察

一口にワーキングメモリの訓練といっても様々な種類があります。視覚性ワーキングメモリ能力は妨害刺激のフィルタリング能率性に左右されます。このことから、視覚性ワーキングメモリ能力が低い人達へ視覚性フィルタリング能率性の訓練を実施した研究(Li et al., 2017)があります。その結果、変化検出課題(Change Detection Task,CDT)における視覚性ワーキングメモリが改善し、記憶容量を反映するとされる対側遅延活動(Contralateral Delay Activity,CDA)という事象関連電位(Event Related Potential,ERP)も視覚性ワーキングメモリ能力が高い人との類似性が強まり、言語性ワーキングメモリスパン課題の成績も向上し、3カ月の追跡後もこれらの変化が維持されたままだったが、流動性知能は高まらなかったそうです。今回の記事で話題にした論文は、ワーキングメモリの向上そのものよりも訓練にともなう注意制御力の改善が不安を低下させるはずだという理屈でした。したがって、ワーキングメモリの訓練方法として、妨害刺激のフィルタリング能率性の訓練をする方がより直接的に注意制御力、ひいては不安にアプローチできると思うのですが、どうでしょうか。

本研究では、遠転移課題への効果が認められなかったものの、ワーキングメモリの訓練後に近転移課題の成績の向上が生じただけでなく、特性不安やテスト不安が低下し、抑制制御力が改善、(CBT群と合算した解析で)注意バイアスも低下しました。ワーキングメモリの訓練が及ぼす可能性がある効果はこれだけでしょうか?例えば、Nilsen & Bacso (2017)によると、15~19歳ではワーキングメモリが話者のコミュニケーション意図の推測能力を予測するとの結果が得られています。話者のコミュニケーション意図の推測能力が低い青年は仲間関係も悪かったそうです。Nilsen & Bacso (2017)は因果関係を立証した研究ではありませんが、ワーキングメモリの訓練が、話し手のコミュニケーション意図の推測能力、ひいては仲間関係に与える影響を調べるのも一考に値します。社交不安障害(社会不安障害)の人は心の理論課題が苦手(Hezel & McNally, 2014)で、対人的・時間的・空間的な視点取得も苦手(Janssen et al., 2014)という先行研究を踏まえると、ワーキングメモリの訓練が社交不安障害者のメンタライジング能力に与える影響を検証するのも1つの発想かもしれません。

ちなみに、Nilsen & Bacso (2017)では、ADHD特性が高いと、ワーキングメモリや抑制制御だけでなく、話者のコミュニケーション意図の推測能力も低いとの結果も得られています。

関連記事⇒ワーキングメモリの訓練効果が特性不安の低下と関連

〇引用文献(アブストラクトだけ読みました)
Li, C., He, X., Wang, Y., Hu, Z., & Guo, C. (2017). Visual working memory capacity can be increased by training on distractor filtering efficiency. Frontiers in Psychology: Cognitive Science, 8:196. doi: 10.3389/fpsyg.2017.00196.

Nilsen, E. S., & Bacso, S. A. (2017). Cognitive and behavioural predictors of adolescents' communicative perspective-taking and social relationships. Journal of Adolescence, 56, 52–63. doi:10.1016/j.adolescence.2017.01.004.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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