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社交不安が高い人は自宅で過ごすことが多い

2017-04-24 (Mon) 23:300
社交不安(社会不安)に関する興味深い研究
興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト、研究方法、研究結果、研究の限界だけ読んだ、社交不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社交不安(障害)なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は社交不安(社会不安)が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き第5版)では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回は、社交不安が高い人は在宅時間が長いか、在宅可能性が高いという研究です。社交不安が高い人で、1日の平均ネガティブ感情が高いか、1日の平均ポジティブ感情が低いと、翌日に自宅で過ごす可能性が高くなったとの結果も得られました。

なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒人は認知バイアスを示すロボットを好む
最近の記事2⇒オキシトシン濃度が高い人はラバーハンド錯覚で身体所有感を感じやすい
↑ラバーハンド錯覚とは何ぞや?という方は「透明人間の錯覚で人前に立ってもストレスを感じにくくなる」という記事の後半をご覧ください。その他のラバーハンド錯覚実験については別のマイブログ『心理学、脳科学の最新研究ニュース』で"ラバーハンド"と検索した結果をご覧ください。

『心理学、脳科学の最新研究ニュース』で"ラバーハンド"と検索すると…

Chow, P. I., Fua, K., Huang, Y., Bonelli, W., Xiong, H., Barnes, L. E., & Teachman, B. A. (2017). Using Mobile Sensing to Test Clinical Models of Depression, Social Anxiety, State Affect, and Social Isolation Among College Students. Journal of Medical Internet Research, 19(3):e62. DOI: 10.2196/jmir.6820.

アメリカ(シャーロッツビル)のバージニア大学心理学研究科、同大学工学応用科学部、ローラのミズーリ科学技術大学コンピュータ科学(計算機科学)研究科の研究者による論文です。

○方法

最終的にデータ解析したのは大学生63人。ソフトウェアのバグや互換性の問題でデータ不足だった9人を除いていたので、本来は72人でした。この72人の大学生について、女子大生が37人、年齢の範囲は18~23歳(平均年齢19.8歳,SD = 2.4)。彼らはアンドロイド型携帯電話を所持していました。

白人が30人(42%)、アジア人が27人(38%)、黒人が3人(4%)、ラテンアメリカ人が3人(4%)、混血/特定不能が9人(13%)。

データ収集は春学期に実施。収集期間は約2週間(平均16.41日, SD = 2.69)。主なデータ収集方法は生態学的経時的評価法/生態学的経時測定法(Ecological Momentary Assessment,EMA)。生態学的経時的評価法とは、日常生活の中で数日間1日に何回か調査協力者からデータを収集する方法のことです。別名は経験サンプリング法/経験抽出法(Experience Sampling Method,ESM)です。生態学的経時的評価法の特長には、日常生活状況という生態学的妥当性の高い場面でデータを取得できることと、即時の報告を求めるため想起バイアスの影響を弱めることができることがあげられます。

●使用した自己報告尺度(最初のベースラインで評定)
・社会的交流不安尺度(Social Interaction Anxiety Scale,SIAS):社会的交流のつらさを測る尺度。質問は20項目で、回答は0~4の5件法。本研究でのクロンバックのα係数は0.83
・抑うつ不安ストレス尺度(Depression Anxiety and Stress Scale,DASS-21):過去1週間の抑うつ症状の評定のため、下位尺度7項目を使用。回答は0~3の4件法。本研究でのクロンバックのα係数は0.91。

上の2つの尺度の他に、携帯電話のSensusアプリをインストールしてもらって、その場の(In-situ)状態感情の報告を参加者に毎日求めました(最大で6回でしたが、アプリのシャットダウンなどが理由で実際に調査協力要請ができたのは、1日に平均して2.5回でした)。調べた感情はポジティブ感情とネガティブ感情でした。視覚アナログ尺度(Visual Analogue Scale,VAS)を使用。回答は0~100までの101件法。スライディングスケールをつねに中央(50)にして提示。

Sensusアプリが感情状態の報告を求めた時間帯は午前9:00時~午後9:00時の間でした。この12時間を2時間×6の時間にわけ、2時間の区間内のランダムな時間帯に感情状態への調査を要請しました。というわけで、2つの調査の間の時間は2分~約4時間となりました。

他の場所と比較した家で過ごす時間の割合を社会的孤立と定義。参加者がどこにいたかは、Sensusアプリで収集したGPSデータで判断。平日の午前10:00時から午後6:00までの時間帯で調査。その結果、データの可能最高取得数と比して90%以上のデータが収集されました。100%でないのは携帯の電源をオフにしていたか、アプリをシャットダウンしていた時があったためと解釈されました。場所の欠損データは最終観察繰越(Last Observation Carried Forward,LOCF)解析で補完しました。

*LOCF解析とは、最後の観察データと同じデータで欠損データを埋め合わせる方法のことです。

GPSによる場所情報の取得は150秒ごとに実施。移動中など、滞在時間が5分未満の場合はデータ解析の対象としませんでした。

○結果

時間的に近接した2つの調査の間、つまり、2分~約4時間の間で、社交不安が高い人は家にいる時間が長くなりました。2分~約4時間の間では、抑うつは家にいる時間との関係が検出されませんでした。午前10:00時から午後6:00時の時間帯でも、社交不安が高い人は家にいる時間が長くなりました。午前10:00時から午後6:00では、抑うつが高い人は家にいる時間が長くなりましたが、有意傾向にとどまりました。

2分~約4時間の間で、社交不安が高いと自宅にいる可能性が高くなりましたが、抑うつとの関係は検出されませんでした。午前10:00時から午後6:00時の時間帯では、社交不安と在宅可能性との関係は検出されませんでした。しかし、抑うつが高い人は家にいる可能性が低くなりました。

2分~約4時間の間でネガティブ感情が高まると、同じ時間帯で、その人の研究期間を通した平均在宅時間よりも長く自宅にいることが多くなりました。2分~約4時間の間でポジティブ感情が高まると、同じ時間帯で、その人の研究期間を通した平均在宅時間より在宅時間が短くなりました。この関係は、抑うつや社交不安の高低によって違うとはいえませんでした。在宅可能性を従属変数とすると、何も有意ではありませんでした。

1日の平均ネガティブ感情が強いと、同じ日にその人の研究期間を通した平均在宅時間よりも長く自宅にいることが多くなりました。しかし、ポジティブ感情の主効果は検出されず、状態感情と抑うつ、社交不安の交互作用も有意ではありませんでした。

1日の平均ポジティブ感情が高いと、同日に在宅している可能性が低くなりました。1日の平均ポジティブ感情が高いと、前日の在宅時間がその人の研究期間を通した平均在宅時間よりも短くなりました。1日の平均ポジティブ感情が高いと、翌日にその人の研究期間を通した平均在宅時間よりも長く自宅にいることが多くなりました。同日の在宅可能性、前日の在宅時間、翌日の在宅時間の予測のいずれも、ネガティブ感情の主効果は検出されず、状態感情と抑うつ、社交不安の交互作用も有意ではありませんでした。

抑うつが高い人では1日の平均ポジティブ感情が低いと、前日に在宅している可能性が高くなりましたが、有意傾向にとどまりました。状態感情の主効果は有意でなく、状態感情と社交不安の交互作用も検出されませんでした。

社交不安が高い人では1日の平均ネガティブ感情が高いと、翌日に自宅で過ごす可能性が高まりました。社交不安が高い人は1日の平均ポジティブ感情が低いと、翌日の在宅可能性が高まりました。

抑うつが高い人は1日の平均ネガティブ感情が高いと、翌日に自宅で過ごす可能性が高まりましたが有意傾向にとどまりました。

○コメント

最初の太字は論文のまとめです。

本研究では、一部例外はあるものの、全般的に社交不安が高い人は家にいる時間が長いか、在宅している可能性が高いという結果が得られました。特に、社交不安が高い人で、1日の平均ネガティブ感情が高いか、1日の平均ポジティブ感情が低いと、翌日に自宅で過ごす可能性が高くなったというのは興味深いです。抑うつと在宅の関係は社交不安と在宅の関係より弱くなりました。

全般的に、ポジティブ感情が高いと外出していることが多く、ネガティブ感情が高いと自宅にいる時間が長い結果となりました。しかし、1日の平均ポジティブ感情が高いと、翌日の在宅時間が長くなった
というのはどういうことでしょうか?これは単なる平均への回帰なのか?あるいはポジティブ感情が高い日は何か外で特別な活動をしていて、翌日はお休みということなのか?私には思いもつかないような要因が絡んでいるのか?よく分かりません。

論文でも議論されていたように、本研究結果はあくまでも相関関係であり、因果関係を意味するものではありません。論文には因果関係を実証する方法として、感情操作が在宅時間、在宅可能性に与える影響を検証したり、在宅時間の操作が感情に与える影響を検討する研究が考えられると論じられていました。

参加者はアプリが収集するデータの種類を事前に了解していたようでした。これが、GPSデータに影響した可能性があります。推測にすぎませんが、もしかしたら、この影響は社交不安が高い人で顕著かもしれません。というのも、これまた当て推量にすぎませんが、社交不安が高い方が(自宅以外の?)自分の居場所を把握されるのが嫌だと思って外出を控えるとも考えられるからです。もっとも、携帯の電源をオフにするかアプリをシャットダウンすれば、位置データが取得できなかったようですが。

本研究はあくまで心理変数(ポジ/ネガ感情や抑うつ、社交不安)による在宅時間や在宅可能性の予測です。自宅で誰と何をしているかということは調べておらず、領域外です。1人でいるのか家族や友達といるのか、その活動内容は?といったことを調べる必要があるでしょう。このことが理由で、本ブログ記事では自宅待機という言葉を使用するのを避けました。というのも自宅待機というと、不活発な印象を与えるからです。もしかしたら、在宅していても活発に活動している可能性がありますので。

それにしても、こういう研究は引きこもり(ひきこもり)を連想させますね。引きこもりの人の位置情報をGPSで収集したらどんな結果になることやら。

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