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最前列にいる学生は成績が高いが、シャイだと…

2017-05-07 (Sun) 22:370
シャイネスに関する興味深い研究
興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)、研究方法、研究結果を主に読んだ、シャイネスに関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。

なぜ、シャイネスなのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は社交不安(社会不安)が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害,社交不安症)を併存していることが多いという知見がある一方で、シャイネスとの関係も見逃せないからです。

たとえば、Sharkey & McNicholas(2012)では、場面緘黙児の内、社交恐怖症(社会恐怖症,社交不安障害)や分離不安障害など重篤な不安を示したのは21%だったのに対し、緘黙児のどちらか片方の「親」がシャイであると自己申告したのが100%でした(ただし、シャイネスレベルは質的な調査で量的なものではない)。

Sharkey & McNicholas(2012)⇒自閉症持ちの第一度近親者がいる場面緘黙児が約半数(愛)

*注意:シャイネスと社交不安は違う概念です。脳科学(神経科学)的にもシャイネスと社交不安は違うと主張する研究論文もあります。

参考記事⇒シャイネスと社会不安の違いは脳構造と脳活動にも表れている

今回は、最初の授業の席でクラスの前列を選択した学生は成績が高くなりやすいが、シャイネスが高いと関係が弱いという研究です。

なお、シャイネス以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒心理学専攻生はダークトライアドが低い
最近の記事2⇒実行機能の枯渇は心の理論の障害を引き起こす
↑記事1ついて:ダークトライアドとは、マキャベリズム、サイコパシー、ナルシシズムという3種類の性格特性のことです。
記事2について:実行機能障害は自閉症スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)の人に多いという知見があります。そのため、自閉症スペクトラム症の人の心の理論機能を考えるうえで重要な研究です。

Pichierri, M., & Guido, G. (2016). When the row predicts the grade: Differences in marketing students' performance as a function of seating location. Learning & Individual Differences, 49, 437-441. doi:10.1016/j.lindif.2016.04.007.

イタリアのサレント大学経営学経済学数学統計学研究科の研究者2名による共著論文です。

〇方法

マーケティング概論の授業での座席の位置と成績との関係を調べました。その際に、2つの性格特性、シャイネスと非同調/不服従(nonconformity)による調整があるかどうかも検討しました。

マーケティングの授業は毎年70人ほどの学生相手に開講されており、5年かけてデータを収集しました。つまり、合計すると350人ほどがサンプルとなりました。しかし、データ解析は、最終試験をパスした270名の内、授業への出席率が60%以上の大学生に限りました。そのため、最終的にデータ解析したのは232人になりました(男性44%,平均年齢24歳)。

毎年同じ部屋で講義していました。座席は13列で286席あり、1列はすべて22席から成りました。教室の入口は西側の中ほどに位置しており、最前列と最後尾で入口までの距離は同程度でした。

●質問紙調査で回答を求めた内容(質問紙は最初の授業で実施)
・着席している席の位置:1列~13列までの範囲で回答
・シャイネスの強さ:7件法のリッカート尺度で自分がどれだけシャイだと思うか自己評価
・不服従の強さ:7件法のリッカート尺度で自分がどれだけ独立的/反抗的か自己評価
*不服従とは、集団規範への反発という意味

座席の位置が横の友達の存在の影響を受けたものかどうかチェック。

学績は講義の最後(6か月後)に評価。筆記試験の結果と口述試験の結果の平均値で算出しました。最終試験の評価手順、講師、シラバスは5年間すべて同一に保ちました。

〇結果

講義で座る席が前列であればあるほど、最終試験の成績が高くなりました。

シャイネスが高くても、平均レベルでも、低くても、座席が前の学生の方が最終試験の成績が高くなりました。しかし、シャイネスが高い学生の方が座席の位置と学績の関係が小さくなりました。

一方、不服従による調整は有意ではありませんでした。

〇コメント

本論文の結果は、マーケティング概論の最初の授業の席でクラスの前列を選択した学生は、学期末の試験の成績が高くなりやすいが、シャイネスが高いと関係が弱いというものでした。

本研究で見いだされた前の席に座る学生ほど成績が高くなるという結果は、因果関係を意味しません。というのも、最初から学習動機づけが高い学生が前の席を選択する可能性があり、学習動機づけが高い方が最終試験の成績が高くなりやすいと考えられるからです。実際、健康科学の学生において、後ろの席を選択する人ほど、動機づけが低いという結果が報告されています(Uffler et al., 2017)。

仮に因果関係があったとしても本研究だけではメカニズムが不明です。1つの可能性として、講壇に近い方が先生の声が明瞭に聞こえると考えられるというものがあります。たとえば、第二外国語の試験において、同じ人でも音源から遠いよりも近い方がリスニングテストの成績が高くなるという研究が存在します(Hurtig et al., 2016)。Hurtig et al.(2016)はスウェーデン語が母語の高校生を対象とした全国共通テストのリスニング試験の成績に与える要因を、音源からの位置(被験者内実験計画)、教室の音の反響具合(被験者間実験計画)という側面から調査したのでした。これは第二外国語のリスニング試験の話で一般化するのは禁物ですが、前列にいる学生の方が、先生の声を間近で明瞭に聞くことができるので、試験の成績が良くなりやすいという仮説を間接的に支持するものです。これがシャイネスとどのようにかかわってくるかは分かりませんが…。

初回の講義で選択した座席の位置だけを調べているというのが本研究の欠点で、論文中にも言及されています。成績は、筆記試験の結果と口述試験の結果の平均値で算出していました。しかし、シャイネスとの関係は試験の種類によって違うとも考えられ、筆記試験と口述試験を別々に解析したらどうなるのか気になります。

なお、本記事タイトルの「最前列にいる学生は成績が高い」という表現は正確ではありません。正しくは「前列なほど成績が高い」です。しかし、後者だと内容が伝わりにくいと考えて、あえて前者を選択しました。

〇引用文献:Uffler et al.(2017)はアブストラクトだけでなく結果の項目も読みましたが、Hurtig et.(2016)はアブストラクトだけ読みました
Hurtig, A., Sörqvist, P., Ljung, R., Hygge, S., & Rönnberg, J. (2016). Student’s Second-Language Grade May Depend on Classroom Listening Position. PLoS ONE, 11(6): e0156533. doi:10.1371/journal.pone.0156533.

Uffler, S., Bartier, J-C., & Pelaccia, T. (2017). Are health sciences students who sit at the back of the lecture hall not motivated? PLoS ONE, 12(3): e0174947. doi:10.1371/journal.pone.0174947.

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