緘黙に関する総説 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

緘黙に関するレビュー論文(総説論文)を読んでみました。

Krysanski, V.(2003). A brief review of selective mutism literature. Journal of Psychology, 137(1), 29-40.

○感想

特に変わったことが書かれているということはなかったです。おそらく、他の文献と比較してみても内容に大差はないような気がします。しかし、心理学の諸理論に焦点をあてたその視点は、緘黙について多様な見方を提供してくれます。

特長的なのは、場面緘黙の原因を精神力動理論や行動理論、家族システム論といった諸理論ごとに説明していることです。それに伴い必然的に治療もこれらの理論をベースとした記述となっています。著者のValerie L. Krysanski氏は臨床家なので治療についての分量が若干多いようです。特に、行動療法はセルフモデリング、未知なるご褒美?(mystery motivator)、自己強化、フェイディング法、分散効果(spacing effect)、ビデオやオーディオ機器を用いたフィードフォワードなど多彩な手法について言及しています。著者によれば、これらの方法は単独で用いるのではなく、組み合わせることで効果が発揮されるそうです。
しかし、緘黙の治療に関する科学的調査はまだまだ進展していません。

事例研究から1.その療法は本当に効果があるのか?2.他の方法よりも優れているか?3.複数の療法を組み合わせるとどうか?4.費用・時間対効果は?といった疑問に答えられません。

また、近年緘黙を分類する試みが行われており、各々の類型で効果的な方法が異なるかもしれません。ただ、現在緘黙で苦しんでいる多くの方々にとっては科学的検証を待っていては始まらないので、既存の精神療法や薬物療法に頼るほかありません。

と偉そうなことを書きましたが、かくいう私も緘黙の後遺症?で引きこもり気味。八方塞がりの状態です。いったいどうすればいいのやら。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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