サイト内検索

内側眼窩前頭皮質のfALFFが低い→希望が高い→不安が低い

2017-07-24 (Mon) 23:150
不安(障害)・恐怖に関する興味深い研究
興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、論文アブストラクト(抄録)だけを読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害になりました。

今回は内側眼窩前頭皮質のfALFFが低い→希望が高い→不安が低いという媒介関係が存在するというお話です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒ハッザ族は夜でも誰かが起きていることが多い
最近の記事2⇒セロトニン濃度が高いと友達との幸福共有効果が低い
↑記事1は現代社会に夜型人間や中途覚醒症状がある人等がいることを考える際に貴重な進化論的視座を与えてくれる研究です。記事2は神戸大学の大学生を対象とした研究です。

Wang, S., Xu, X., Zhou, M., Chen, T., Yang, X., Chen, G., & Gong, Q. (2017). Hope and the brain: trait hope mediates the protective role of medial orbitofrontal cortex spontaneous activity against anxiety. NeuroImage, 157, 439-447. doi:10.1016/j.neuroimage.2017.05.056.

中国の四川大学華西病院放射線科华玺MR研究センター(HMRRC)、四川大学華西病院精神科、四川大学公共管理学院心理学研究室、西南民族大学社会学心理学研究科、成都市メンタルヘルスセンター精神放射線科の研究者による論文です。

〇序論と目的

ポジティブ心理学では希望は目標志向性の期待のことで、主体的思考(agency thinking)と経路思考(pathway thinking)の2つを含みます。主体的思考とは、目標を達成するために行為を開始、持続させる動機づけのことです。経路思考とは、目標への道筋を見つける能力のことです。先行研究では希望に抗不安的な役割があることが見いだされています。しかし、希望の神経生物学的基盤や希望が不安を低下させる脳内メカニズムについては、まだよく分かっていません。そこで、希望のfMRI(機能的磁気共鳴画像法;functional Magnetic Resonance Imaging)研究を実施しました。

〇方法

fMRIの解析方法の中でも、BOLD信号のフラクショナル低周波律動振幅/低周波振動振幅/低周波摂動振幅(fractional Amplitude of Low-Frequency Fluctuations,fALFF)を検出する方法を用いました。安静時fMRIでした。

fALFFとは、低周波数帯域のパワーを総周波数帯域の全パワーで除して脳活動を捉えたものです。なお、フラクショナルを頭につけないALFFというのもあって、こちらは低周波数帯域の総パワーのことです。低周波数帯域は0.01–0.08Hzが使われることがありますが、0.01-0.1Hzとされることもあります。

研究協力者は231人の高校生でした。

〇結果

全脳にわたる相関解析の結果、特性希望が高いほど、両側内側眼窩前頭皮質のfALFFが低くなりました。 内側眼窩前頭皮質は報酬関連処理やモチベーション産生、問題解決、目標志向性行動に関与しているとされます。

また、媒介分析の結果、安静時の内側眼窩前頭皮質のfALFFが低い→特性希望が高い→不安が低いという媒介関係が検出されました。ポジティブ感情やネガティブ感情の効果を調整しても、同様の結果が得られました。

なお、Hopeの訳語を希望とすることは問題で、ホープとした方が良いという研究者もいることを付記しておきます(加藤・Snyder, 2005)。また、加藤・Snyder(2005)は、上で私が主体的思考(agency thinking)と訳したものあるいはそれに類似する概念を目標指向的意志(agency thoughts,意志)、私が経路思考(pathway thinking)と訳したものあるいはそれに類似する概念を目標指向的計画(pathways thoughts,計画)としています。

〇引用文献(論文タイトルと注釈1・2および本文の一部だけ読みました)
加藤司・Snyder, C. R. (2005). ホープと精神的健康との関連性-日本版ホープ尺度の信頼性と妥当性の検証- 心理学研究 76, 227-234. doi:10.4992/jjpsy.76.227.

スポンサードリンク

Comment form
Name
URL
Title
Comment
Pass (Edit)
管理者にのみ公開
Trackback URL
http://smetc.blog120.fc2.com/tb.php/746-e61605ee