24時間の沈黙で物語作成の際の創造的想像力が豊かになる | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

2017年9月20日(水)~22日(金)を会期として開催予定の日本心理学会第81回大会(会場:久留米シティプラザ)で沈黙が創造性に及ぼす影響を調べた一般研究発表(ポスター)が予定されています。場面緘黙症(選択性緘黙)のことを直接調べた研究ではありませんが、興味深かったので、本ブログでこのポスター発表についてふれておきます。

責任発表者は琉球大学大学院人文社会科学研究科の塩川満理香氏、連名発表者は医療法人福智会福智クリニックの星野菜月氏、琉球大学大学院医学研究科の甲田宗良助教、琉球大学法文学部人間科学科人間行動専攻課程の伊藤義徳准教授です。

塩川満理香・星野菜月・甲田宗良・伊藤義徳(2017). 沈黙が創造性に及ぼす影響 第81回日本心理学会大会発表論文集,
英語表記:Shiokawa, M., Hoshino, N., Koda, M., & Ito, Y. (2017). The Effect of Keeping Silence on Creativity. Proceedings of the 81th Annual Convention of the Japanese Psychological Association,

〇目的

先行研究では、5分間の沈黙中の思考によってアイディア産出課題で独創的な考えが多く思いつくことが示唆されるなど、沈黙が創造性を高める可能性が示唆されていました。今回は「24時間の沈黙が創造的能力の向上に及ぼす影響を検討することを目的とし」ました。また、「従来の創造性検査だけでなく,創造性の礎となる想像力を測定する為,創造的想像力にも着目し,物語作成課題を用いてこれを測定することを試み」ました。

〇方法

実験参加者である大学生26名(男性13名,女性13名,平均年齢20.2歳,SD=1.43)を沈黙群と統制群に割り当てました。教示に従っていなかった3名を除くと、データ解析に用いた参加者の詳細は以下の通りです。なお、沈黙群と統制群の間には、性別、年齢、性格特性、発話傾向の有意差が検出されませんでした。

・沈黙群12名:男性8名,女性4名,平均年齢20.10歳,SD=1.00
・統制群11名:男性5名,女性6名,平均年齢20.00歳,SD=1.73

まず、全員が以下の課題や検査、尺度調査を受けました。
・出来るだけ突飛な学生生活に関するストーリーを創作する物語作成課題
・TCT創造性検査(The Test for Creative Thinking)の用途テスト
・日本語版10項目性格質問紙(Japanese version of the Ten Item Personality Inventory,TIPI-J)
・発話傾向尺度
・抑うつ不安気分尺度(Depression and Anxiety Mood Scale,DAMS)

*用途テストとは、ある物に関して本来の用途からどれだけ離れた使い方を思いつけるかを調べる創造性検査のことです。本研究では、鉛筆と靴を使用しました。物語作成課題と用途テストの評定は、心理学専攻の大学生3名(男性2名,女性1名,平均年齢21.3歳,SD=1.53)が実施。物語作成課題の回答は1.斬新な2.奇抜な3.独特な4.面白いという観点から、全くそう思わない(1)~非常にそう思う(5)の5件法で評定し、合計得点を物語の創造性得点としました。用途テストはマニュアル評定を実施。

次に沈黙群に「24時間沈黙して生活する課題を課し」、統制群に「24時間普段通りの生活を送」らせました。その翌日、実験室で前回と同じテストを実施。また、沈黙群は「沈黙して過ごせたか」、統制群は「普段通りで過ごせたか」を全くできなかった(1)~非常によくできた(10)の10件法で回答。

〇結果

「沈黙して過ごせたか(沈黙群)」、「普段通りで過ごせたか(統制群)」という課題操作チェックの指標得点は、沈黙群で全員が7点以上、統制群で全員が8点以上であり、「実験課題の教示は適切に遵守されたと判断」されました。

沈黙群において、24時間沈黙する前よりも24時間沈黙した後の方が、物語作成課題の創造性得点が高くなりました(効果量η二乗 = 0.48)。しかし、ベースラインでも24時間沈黙(統制群なら普段通りの生活)した後でも、沈黙群と統制群の間に創造性得点の有意差は検出されませんでした。

「創造性(拡散的思考)]用途テストの創造性得点(回答数(流暢性),カテゴリー数(柔軟性),異態再生の回答数(独創性))についても同様の分析を行ったところ,いずれも交互作用は有意で」ありませんでした。

〇コメント

沈黙群では24時間沈黙する前より24時間沈黙した後の方が、斬新で奇抜、独特で面白い学生生活に関するストーリーを創作することができました。ただ、物語作成課題の創造性得点について、群間差が検出されなかったことや群×測定段階の交互作用は有意傾向にとどまっていたのに、単純主効果の検定を行うという荒っぽい強行策をとっているのが気がかりです(探索的解析と言ってしまえばそれまでですが…)。なお、交互作用のη(イータ)二乗は.15でしたので、全分散の内、交互作用で説明できる分散の割合は15%と解釈できます。

仮に1日喋らなかったら、物語を創造的に想像し、創作に生かすのが上手になったとしたら、場面緘黙症の人への影響が気になります。修学旅行や合宿などを除けば、学校や職場など喋れない場面に24時間いることは稀です。もう少し短い時間でも似たような効果がでるのでしょうか?今後時間の長さの影響を実験的に検討することが望まれます。ただ、一人暮らしの場面緘黙症当事者(・経験者)だと、1日の間何も喋らずに過ごすということがあるかもしれません。

24時間の沈黙で物語作成課題の創造的想像力が高まったとしても、本研究では普段とは違った物の使い方を考える用途テストの成績への影響は検出されませんでした。したがって、24時間沈黙の効果は創造力の種類によって異なることが示唆されます。

○引用文献(URLは2017年9月3日現在)
塩川満理香・星野菜月・甲田宗良・伊藤義徳(2017). 沈黙が創造性に及ぼす影響 第81回日本心理学会大会発表論文集,
英語表記:Shiokawa, M., Hoshino, N., Koda, M., & Ito, Y. (2017). The Effect of Keeping Silence on Creativity. Proceedings of the 81th Annual Convention of the Japanese Psychological Association,
https://www.myschedule.jp/jpa2017/search/detail_program/id:1232
https://www.myschedule.jp/jpa2017/img/figure/11095.pdf

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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