「問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。
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2017.11.06
興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(摘要)だけを読んだ、社交不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。
なぜ、社交不安(症/障害)なのかというと、場面緘黙症児(選択性緘黙症児)は社交不安が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害)を併存していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害(不安症)になっています。
今回は、ケタミンの抗不安作用に即効性があるという研究です。
なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
最近の記事1⇒誇大自己愛が強いとFacebook中毒が重篤になるメカニズム
最近の記事2⇒Q&Aサイトでのネガティブな告白は罪悪感から解放されるため
Glue, P., Medlicott, N. J., Harland, S., Neehoff, S., Anderson-Fahey, B., Le Nedelec, M., Gray, A., & McNaughton, N. (2017). Ketamine’s dose-related effects on anxiety symptoms in patients with treatment refractory anxiety disorders. Journal of Psychopharmacology, 31(10), 1302–1305. doi:10.1177/0269881117705089.
ニュージーランドのオタゴ大学精神医学研究室&薬学部&予防医学社会医学研究室&心理学研究室の研究者による論文です。
〇序論と目的
ケタミンというお薬があります。ケタミンとは、NMDA受容体拮抗薬(アンタゴニスト)のことで、麻酔薬として利用できます。しかし、なんといっても精神医学ではケタミンの抗うつ作用への注目が高いです。これは、その抗うつ作用の即効性、持続性のためです。また、治療抵抗性うつ病だけでなく、PTSD(心的外傷後ストレス症/心的外傷後ストレス障害)や強迫症(強迫性障害)にもケタミンが有効である可能性が示唆されています。
うつ病と不安症(不安障害)では脳ネットワークの活動に類似性があるため、ケタミンは難治性の不安症にも有効である可能性が考えられます。そのことを検討することを目的としたのが本研究です。
〇方法
難治性全般性不安症 and/or 社交不安症の患者12名が参加。彼らはうつ病ではありませんでした。
ケタミンの効能、安全性の検証のため、用量漸増単回投与試験(ascending single dose study=単一用量漸増試験(Single Ascending Dose study,SAD試験)?)を実施。ケタミン0.25 mg/kg、0.5 mg/kg、1 mg/kgを1週間の間隔を空けて皮下投与。
〇結果
ケタミンの皮下投与から1時間以内に不安の低下が生じ、その効果は7日間持続しました。用量反応関係も認められ、投与量が多いほど抗不安作用が高くなりました。ただし、解離症状副作用、血圧、心拍数の変化にも用量反応関係が生じました。つまり、0.25 mg/kgではそれほど変化はなかったのですが、高用量になるほど変化が大きく、持続時間が長くなりました。
12人の患者の内、10人は0.5~1 mg/kgで治療反応性が認められました。ケタミンの安全性は高く、認容性(忍容性)も十分でした。認容性とは、どれだけ有害事象に耐えられるかという意味の用語です。認容性が高いということは、たとえ有害事象が生じてもそれは耐えられる範囲であることを意味します。
〇コメント
ケタミンは治療抵抗性うつ病、強迫症、PTSDに有効だとされています。今回は全般性不安症 and/or 社交不安症への有効性も示唆されたということで、ケタミンはネガティブ情動を特徴とする精神障害に広く効果がある可能性が示唆されると論文に書かれてあります。また、これらの精神障害の神経生物学的誘因に共通性があると議論されています。
関連研究⇒大うつ病と不安障害に共通する脳変性と特異的な脳変性
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は急性投与だと不安が高くなり、長期間服用することで不安が低下していく薬です。本研究では、SSRIとは対照的に、ケタミンは即効性のある抗不安薬である可能性が示唆されました。将来的には場面緘黙症にケタミンなどという妄想が爆発しそうですが、現時点では研究は緒についたばかりで、まだ不安症に対してどの程度の効果があるのかは不明のままです。また、ケタミンの児童青年への影響についても慎重に検討をしなければなりません。
SSRI研究のご紹介
・SSRIの急性投与は扁桃体の活動を高める
・SSRIの慢性服用でネガティブな感情が減少、協力的になる
なぜ、社交不安(症/障害)なのかというと、場面緘黙症児(選択性緘黙症児)は社交不安が高いか、もしくは社交不安障害(社会不安障害)を併存していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害(不安症)になっています。
今回は、ケタミンの抗不安作用に即効性があるという研究です。
なお、社交不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
最近の記事1⇒誇大自己愛が強いとFacebook中毒が重篤になるメカニズム
最近の記事2⇒Q&Aサイトでのネガティブな告白は罪悪感から解放されるため
Glue, P., Medlicott, N. J., Harland, S., Neehoff, S., Anderson-Fahey, B., Le Nedelec, M., Gray, A., & McNaughton, N. (2017). Ketamine’s dose-related effects on anxiety symptoms in patients with treatment refractory anxiety disorders. Journal of Psychopharmacology, 31(10), 1302–1305. doi:10.1177/0269881117705089.
ニュージーランドのオタゴ大学精神医学研究室&薬学部&予防医学社会医学研究室&心理学研究室の研究者による論文です。
〇序論と目的
ケタミンというお薬があります。ケタミンとは、NMDA受容体拮抗薬(アンタゴニスト)のことで、麻酔薬として利用できます。しかし、なんといっても精神医学ではケタミンの抗うつ作用への注目が高いです。これは、その抗うつ作用の即効性、持続性のためです。また、治療抵抗性うつ病だけでなく、PTSD(心的外傷後ストレス症/心的外傷後ストレス障害)や強迫症(強迫性障害)にもケタミンが有効である可能性が示唆されています。
うつ病と不安症(不安障害)では脳ネットワークの活動に類似性があるため、ケタミンは難治性の不安症にも有効である可能性が考えられます。そのことを検討することを目的としたのが本研究です。
〇方法
難治性全般性不安症 and/or 社交不安症の患者12名が参加。彼らはうつ病ではありませんでした。
ケタミンの効能、安全性の検証のため、用量漸増単回投与試験(ascending single dose study=単一用量漸増試験(Single Ascending Dose study,SAD試験)?)を実施。ケタミン0.25 mg/kg、0.5 mg/kg、1 mg/kgを1週間の間隔を空けて皮下投与。
〇結果
ケタミンの皮下投与から1時間以内に不安の低下が生じ、その効果は7日間持続しました。用量反応関係も認められ、投与量が多いほど抗不安作用が高くなりました。ただし、解離症状副作用、血圧、心拍数の変化にも用量反応関係が生じました。つまり、0.25 mg/kgではそれほど変化はなかったのですが、高用量になるほど変化が大きく、持続時間が長くなりました。
12人の患者の内、10人は0.5~1 mg/kgで治療反応性が認められました。ケタミンの安全性は高く、認容性(忍容性)も十分でした。認容性とは、どれだけ有害事象に耐えられるかという意味の用語です。認容性が高いということは、たとえ有害事象が生じてもそれは耐えられる範囲であることを意味します。
〇コメント
ケタミンは治療抵抗性うつ病、強迫症、PTSDに有効だとされています。今回は全般性不安症 and/or 社交不安症への有効性も示唆されたということで、ケタミンはネガティブ情動を特徴とする精神障害に広く効果がある可能性が示唆されると論文に書かれてあります。また、これらの精神障害の神経生物学的誘因に共通性があると議論されています。
関連研究⇒大うつ病と不安障害に共通する脳変性と特異的な脳変性
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は急性投与だと不安が高くなり、長期間服用することで不安が低下していく薬です。本研究では、SSRIとは対照的に、ケタミンは即効性のある抗不安薬である可能性が示唆されました。将来的には場面緘黙症にケタミンなどという妄想が爆発しそうですが、現時点では研究は緒についたばかりで、まだ不安症に対してどの程度の効果があるのかは不明のままです。また、ケタミンの児童青年への影響についても慎重に検討をしなければなりません。
SSRI研究のご紹介
・SSRIの急性投与は扁桃体の活動を高める
・SSRIの慢性服用でネガティブな感情が減少、協力的になる
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