場面緘黙とトラウマ、発達遅延、社交性の関係 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

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2018年3月1日から3日にかけてアメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアにて開催された東心理学会年次総会にて、場面緘黙症(選択性緘黙)に関する研究発表がありました。いずれも研究方法の詳細は不明ですが、せっかくですのでそのポスター発表の内容をご紹介します。

〇場面緘黙とトラウマの関係に関する調査(Bowden et al., 2018)

場面緘黙児のトラウマ経験率、もし経験していれば、その種類に関する調査です。場面緘黙はトラウマとは関連しないとの研究がある一方で、場面緘黙児にトラウマ歴があるとの研究も存在します。今回の研究では、場面緘黙児のほとんどはトラウマを経験していなかったそうです。トラウマがあった緘黙児では、家族トラウマ、環境トラウマ、医療トラウマ、学校トラウマの4タイプが見いだされました。

場面緘黙はトラウマが主因とはいえませんが、かといって研究が少ない現状では全く関係がないと断言する根拠もありません。今回は場面緘黙とトラウマにはほとんど関連がなかったみたいですが、そもそも緘黙児でトラウマ経験者を探すというのもおかしな話です。トラウマが場面緘黙のリスク要因になるかどうかは、トラウマ経験者の追跡調査でもって明白にされる事項です。なぜならば、そもそもトラウマ経験者の数が少なければ、たとえトラウマが場面緘黙のリスクになるにしても、緘黙児の中にトラウマ経験がある子は限られると考えられるからです。これは、場面緘黙の発症、維持には複数の要因があると言われることを考慮すればなおさらです。

場面緘黙云々とは関係なしのそもそものトラウマ経験率を考えに入れないことは「基礎生起率(の)無視/事前確率(の)無視/基準率(の)無視(base rate neglect)とか「基準率錯誤(base rate fallacy)」という認知バイアスとの関連が深そうですね。基準率錯誤とは、確率判断において、事象が生じるもともとの確率(基礎生起率)を無視し、個別情報へのウエイトが高くなる認知バイアスのことです。この場合だと、場面緘黙とは関係なくトラウマを経験する確率を無視し、緘黙児でトラウマ経験があるか否かという特定の情報ばかり注目してしまっています。

*注意:基準率錯誤については、大学で少し学んだだけで、専門的に研究したことはないので、もしかしたら間違っているかもしれません。

場面緘黙と発達遅延の関係に関する調査(Martin et al., 2018)

109人の場面緘黙児の発達遅延を場面緘黙総合診断質問紙(Selective Mutism Comprehensive Diagnostic Questionnaire,SMCDQ)で評定。その結果、場面緘黙児の中で発達遅延経験のある子の割合と発達遅延経験のない子の割合の間に有意差が検出されました。場面緘黙児の67%は発達遅延を経験したことがありませんでした。場面緘黙児の中で最も多くみられた発達遅延は発話や言語に関するものでした。

場面緘黙児の発達遅延を調べた研究はこれが初めてではありませんが、109人とサンプルが多いのが本研究の強みでしょうか。SMCDQによるアセスメントというのも気になります。SMCDQの信頼性・妥当性について検討した論文が査読付きジャーナルに掲載された形跡は発見されません。しかし、「場面緘黙児の感覚過敏、併発症等の大規模調査」という記事で詳述した研究発表4報中3報は、親がSMCDQに回答することで行ったということが明示されており、今後も活用されるかどうか注目に値します。

〇場面緘黙と社交性の関係に関する調査(Michaels et al., 2018)

場面緘黙児の社交性に関する調査です。アブストラクトだけでは、診断を受けた場面緘黙児なのか場面緘黙傾向も含めた広い意味なのかは判然としませんが、タイトルを見ると前者の可能性が高そうです。対象児は324人。結果は、友達を作るのに興味がある子の割合と興味がない子の割合に統計学的な有意差ありというものでした。友達作りに関心のあった子は92.9%。場面緘黙児は(人に?)興味がないから話さないという誤解にもかかわらず、場面緘黙児は人と仲良くしたいが、苦労しているとまとめられています。

以前、このブログでも、親によれば、場面緘黙児の94%は他者と一緒に時間を過ごすことを選好するという調査(Shumka et al., 2018)について書きました。しかし、サンプル数が場面緘黙児31人と少なかったです。他者と一緒に時間を過ごすことを選好することと友達作りに関心があることとは違うことでしょうが、大きく言えば社交性という概念で包括できます。今回はShumka et al.(2018)よりも大規模な調査で場面緘黙児のほとんどは社交性があることを示唆した点で意義深いです(と偉そうなことを書きましたが、要旨だけでは研究内容の詳細やその質は分かりません)。

○引用URL:URLの最終アクセス日は2018年4月1日現在
Bowden, L., Martin, P., Michaels, K., Khrapatina, I., Shipon-Blum, E., & Armstrong, S. L. (2018, March). Debunking the myth: selective mutism and trauma. Poster presented at 2018 Annual Meeting of the Eastern Psychological Association, Downtown Marriott Hotel Philadelphia, PA. <https://www.easternpsychological.org/files/DOCUMENTLIBRARY/EPA%202018%20Program(2).pdf>

Martin, P., Bowden, L., Michaels, K., Khrapatina, I., Shipon-Blum, E., & Armstrong, S. L. (2018, March). Exploration of developmental delays present among children diagnosed with selective mutism. Poster presented at 2018 Annual Meeting of the Eastern Psychological Association, Downtown Marriott Hotel Philadelphia, PA. <https://www.easternpsychological.org/files/DOCUMENTLIBRARY/EPA%202018%20Program(2).pdf>

Michaels, K., Bowden, L., Martin, P., Khrapatina, I., Shipon-Blum, E., & Armstrong, S. L. (2018, March). Shyness and sociability in a large sample of children with selective mutism. Poster presented at 2018 Annual Meeting of the Eastern Psychological Association, Downtown Marriott Hotel Philadelphia, PA. <https://www.easternpsychological.org/files/DOCUMENTLIBRARY/EPA%202018%20Program(2).pdf>

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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