扁桃体が過剰反応する行動抑制 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

馴染みのない物や人を警戒し回避する行動抑制。子どもの行動抑制は将来、社会不安障害やうつ病になる確率を高めると言われています。

今回は行動抑制と扁桃体の関係について調べた論文です。私の知る限り、行動抑制と扁桃体の関係について直接調査した研究はこれが初めてです。なお、行動抑制についてはこちらをご覧ください。

Schwartz, C. E., Wright, C. I., Shin, L. M., Kagan, J., & Rauch, S. L.(2003). Inhibited and uninhibited infants "Grown Up": adult amygdalar response to novelty. Science, 300(5627), 1952-1953.

★概要

大人(約22歳)が実験に参加しています。この大人は、2歳の時に行動抑制だったり、その対極だったりした人達です。以下、前者を抑制群、後者を非抑制群と呼称します。

抑制群と非抑制群に人間の無表情な顔を見せ、その間の脳活動をfMRIで調べています。以前参加者に見せた顔(既知条件)と初めて見せる顔(新奇条件)という2タイプの刺激を用いています。この条件設定が実験のミソとなります。

その結果、抑制群は既知条件よりも新奇条件の方が扁桃体の反応が強いことが分かりました。一方、非抑制群ではそのような差異は認められませんでした。

新奇条件では抑制群は非抑制群よりも扁桃体の活動が活発でした。一方、既知条件では抑制群と非抑制群の間に扁桃体反応の差がありませんでした。

★コメント

幼児期に抑制気質があった場合、大人になっても扁桃体が興奮しやすいことを示した研究です。ただ、2歳の頃に、行動抑制を認めた大人が実験当時も抑制気質があったかどうか言及がないことが残念です。後に述べるヴァンダービルト大学の研究では、幼児期の抑制傾向を大人になってから調べているという欠点はあるものの、実験時での抑制傾向の有無も質問紙調査しています。

○ヴァンダービルト大学の研究との比較

その後、ヴァンダービルト大学の研究チームが2009年に論文を発表するまで、ほとんど抑制気質と扁桃体に関する研究は公表されていません。しかも、その2009年の論文は、既知の顔を呈示する条件でも扁桃体の反応時間や大きさが抑制気質のあるなしで異なるという結果(Blackford et al., 2009)です。同じ研究グループが2010年に電子上で発表した研究では、抑制気質があった/ある大人では、扁桃体が既知の顔刺激に対しても反応するとの結果(Blackford et al., 2010)が得られています。

ヴァンダービルト大学の研究を見る限り、どうも抑制気質の人は既知な刺激(人)に対する扁桃体の反応も高まっていると思われます。しかし、今回の研究では既知条件で扁桃体の反応差が認められていません。これらの矛盾する結果は実験手続きや被験者の特質の差異などで説明できるとBlackford et al.(2010)は論じています。これからの検証が待たれます。

○なぜ幼児期にfMRIを使用しないのか?

なぜ、わざわざ幼児期ではなく、大人でfMRIを適用しているのか疑問に思っている方もいるかもしれません。しかし、幼児期にfMRIなどを行うのは不可能ではないものの困難です。MRI装置は通常、高音量でうるさいです。加えて、少しでも動いてしまうとMRI撮像画像が歪んでしまいます。私が読んだかぎりでは、2.5mm~3mm以上ずれてしまうと、データとして使わないという文献が多いです。大人ならまだしも、子どもだと脳検査が難しいのはこういう理由からです。

そういえば、最近、子どものMRI検査中に麻酔をかけたことで合併症を誘発したことのある病院数が日本小児科学会医療安全委員会の調査で判明したというニュースが報道されていましたね。深刻な場合は呼吸停止に至るそうです。この調査を知った時は「なるほど、麻酔をかけるのか!」と幼児期MRI検査の手法について長年抱いていた謎が氷解しました。

○引用文献

Blackford, J. U., Avery, S. N., Shelton, R. C., & Zald, D. H.(2009). Amygdala temporal dynamics: temperamental differences in the timing of amygdala response to familiar and novel faces. BMC Neuroscience, 10, 145.

Blackford, J. U., Avery, S. N., Cowan, R. L. Shelton, R. C., & Zald, D. H.(2010). Sustained amygdala response to both novel and newly familiar faces characterizes inhibited temperament. Social Cognitive and Affective Neuroscience, (in press)

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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