周産期~産後の母親の不安は子供の発達遅延のリスク | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

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興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、論文アブストラクト(抄録)だけ読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害になりました。

今回は、周産期~産後の母親の不安は子供の発達遅延のリスクとなるという研究です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒睡眠問題が重い人はお金より睡眠に関する質問に答えることを優先する
最近の記事2⇒非倫理的行動は2人の社会的絆を強める手段となる
↑記事1はタイトルだけだと誤解されかねませんが、「睡眠問題が重い人はお金に関する質問より睡眠に関する質問に答えることを優先する」という意味ではなく、「睡眠問題が重い人は金銭獲得よりも睡眠に関する質問に答えることを優先する」という意味です。タイトルを短くしたいためあえて誤解を招く表現にしました。

Mughal, M. K., Giallo, R., Arnold, P., Benzies, K., Kehler, H., Bright, K., & Kingston, D. (2018). Trajectories of maternal stress and anxiety from pregnancy to three years and child development at 3 years of age: Findings from the All Our Families (AOF) pregnancy cohort. Journal of Affective Disorders, 234, 318-326. doi:10.1016/j.jad.2018.02.095.

カナダのカルガリー大学看護学部、同大学カミング医学部マシスン精神衛生研究教育センター、オーストラリアのマードック児童研究所の研究者による論文です。

〇背景と目的

母親の苦痛に関する現存する研究は妊娠中または産後のストレス・不安と子供の発達との関係についてのものに集中しています。対して、母親のストレスや不安症状の「変遷」と幼児期の子供の発達との関連を調査した研究は少ないです。そこで本研究の目的は、妊娠中期から産後3年目までの母親のストレス、不安症状の軌跡と3歳での子供の発達との関係を探ることとしました。

〇方法

データは全家族研究(All Our Families study,AOF研究)から。AOF研究とは、妊婦とその家族の縦断研究コホートを用いた研究のことです。2008年に始動しました。AOF研究はかつて全赤ちゃん研究(All Our Babies study,AOB研究)と言われていました。

AOF研究で3年間の追跡調査に協力した母子1,983ペアのデータを解析。妊娠中期から産後3年目までの女性のストレス・不安の軌跡の同定に潜在クラス分析を使用。母親のストレス・不安の経過と子供の発達遅延の関係を調べるため、共変量を調整した多変量ロジスティック回帰分析を実施。

〇結果

潜在クラス分析により、母親のストレス・不安症状の軌跡は3種類に分類できました。多変量解析により、高不安症状クラスに分類された母親の子供は3歳で発達遅延であるリスクが高くなりました(調整済みオッズ比2.80, 95%信頼区間1.42, 5.51)。

〇コメント

アブストラクトでは、本研究の限界として母親の精神的健康の評定に自己報告を用いたこと、父親の精神的健康に関するデータが欠如していたことがあげられています。

もし、周産期~産後の母親の不安と3歳児の発達遅延との関係の間に因果関係があれば、妊娠中からの女性の不安のケアで子供の発達遅延のリスクが低下するかもしれません。

ところで、多いかどうかはともかく場面緘黙児に発達遅延を併せ持つ場合があります。特に発話や言語に関する発達遅延は場面緘黙児の中で多く認められるとの研究(Martin et al., 2018)があります。場面緘黙児の家庭には不安症の人、不安が高い人が多いというのもよく聞く話です。もし、場面緘黙児の母親で周産期~産後の不安が高い傾向にあり、なおかつ本研究結果が確からしく、場面緘黙症にもあてはめることができるほど外挿可能性が高いならば、場面緘黙児の発達遅延の背景には、周産期~産後の母親の不安が関係しているということになります。

場面緘黙症の研究ばかり追っていては、このような背景に関する洞察は得られず、緘黙の総合的理解のためには緘黙以外のことを学ぶ必要があるということを再認識させられます。もっともここでいう「不安」が何を意味するのか、アブストラクトだけではよく分かりませんが。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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