心理学の授業で選択性緘黙について知った大学生が多い | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

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東京成徳大学・東京成徳短期大学応用心理学部臨床心理学科の江口めぐみ准教授が著者の選択性緘黙(場面緘黙)に関する研究論文の抄録が公開されました。この記事では、その研究の概要をご紹介しましょう。

なお、江口准教授は立正大学心理学部助教の時期に『選択性緘黙児童生徒の多様な状態像の解明と個に応じた支援方法の検討』という研究課題で、園山繁樹教授(筑波大学)、濱口佳和教授(筑波大学)、下山真衣助教(信州大学)、松下浩之准教授(山梨大学)、酒井貴庸講師(甲南女子大学)、関口雄一講師(山形大学)とともに科研費を使った緘黙研究を進めていくことになっていました。しかし、現在は立正大学から東京成徳大学・東京成徳短期大学に移籍されたとのこと。この移籍が緘黙研究に与える影響については、部外者である私には分かりません。また、今回ご紹介する研究が、科研費を受けた研究と関係があるのかどうかも私には分かりません。ただ、もし関係があるとすれば、いずれ科研費の「研究成果」欄に記載されるはずです。また、論文に「本研究は科研費により云々」との文句がでてくる可能性もあります。

↓クリックすると、科学研究費補助金データベースのページに飛びます。
選択性緘黙児童生徒の多様な状態像の解明と個に応じた支援方法の検討(URLはhttps://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-16H03808/16H038082016jisseki/)

江口めぐみ(2018). 大学生における選択性緘黙への認識に関する調査 立正大学臨床心理学研究 16, 31-39.
英語表記:Eguchi, M. (2018). Survey on University Student’s Attitudes toward Selective Mutism. Bulletin of Psychological Clinic, Rissho University, 16, 31-39.

〇問題意識
選択性緘黙の人の周囲の人達の緘黙に対する認識や関わりについて検討が不足している

〇研究目的
大学生の選択性緘黙への認識について検討すること

〇方法
大学生118名に質問紙調査

〇結果
・選択性緘黙の名称もしくは症状について何らかの知識があった者は約7割
・選択性緘黙について何らかの知識があった者の多くが心理学の授業内で知識を得ていた

・選択性緘黙に接した経験のある者は約3割

・選択性緘黙の当事者は男性よりも女性で多い

・(選択性緘黙の人に)接した時期は小・中学校が約8割
・選択性緘黙の人に接した際に本人や周囲から症状や望ましい関わりについての説明はほとんどなく,学生は自発的に自然な関わりをとっていた

・正しい知識や説明を求める意見は7割
・正しい知識が本人の理解やサポートに繋がるといった意見、説明がないことで人間関係の悪化や誤っ た対応に繋がることを懸念する意見が多く、個人の意思を尊重することや周囲の自発的な配慮を求める意見もあった

●コメント

以下、選択性緘黙を場面緘黙と表記する。

場面緘黙について何らかの知識があった大学生が70%ほどとは、私が思っていたよりも高いです。ただ、これは最近になってからのことなのか、それとも昔からこうなのかは不明です。また、専攻分野によって緘黙に関する知識の程度が違うと予想されますが、抄録では単に「大学生118名」とあるだけで詳細は不明です。

場面緘黙を知っていた大学生の多くが心理学の授業内で知識を得ていました。私は心理学専攻でしたが、習わなかったぞとツッコミたいです。考えられる理由を列挙しますと、

・2010年代の後半になって緘黙が大学の心理学の授業で取り上げられるようになり、私が在学していた頃はまだ緘黙が大学の心理学の授業で登場することは稀だった?

・以前から他の大学では授業で取り扱われていて、たまたま私の大学だけ緘黙に関する知識を得る機会がない講義ばかりだった?

・私が選択した科目以外では緘黙が講義に登場していた?

・この論文でいう心理学とは「臨床心理学」のことで、私が専攻していた実験に重きを置く「基礎心理学(実験心理学)」とは違う?

・実は緘黙について授業で軽くふれられたか、もしくは独学や試験勉強、レポート作成の際に読んだ文献で緘黙について軽く書かれていたが、それを見逃していた?または、見逃していなかったが、記憶が歪んで学ばなかったという印象だけが残っている?

ちなみに私は大学で教育学科目も履修しましたが、そこでも緘黙について表立って取り上げた授業があった覚えはありません。場面緘黙症状は学校が主な現場だとするならば(もちろんそんなに単純ではありませんが)、教育学科目でこそ緘黙についての講義がされるべきでしょう。

場面緘黙の人に対して、学生は自発的に自然な関わりをとっていた一方で、正しい知識や説明を求める意見が7割に上っていました。このことは場面緘黙の人に対して、行動面では自然な対応ができるが、内心では「なぜこの子は喋らないんだろう?」などの疑問を抱えていた可能性を示唆します(と偉そうなことを書きましたが、本文を読んでみないことには…)。

なお、時期、場所、サンプルはばらばらですが、場面緘黙症の認知度調査は今回が初めてではありません。私が知る限りでも、公立小学校の一般教諭及び養護教諭(杉森・石原, 2011)中学校の一般教諭(成田・斉藤, 2012)、授業で場面緘黙について学習済みで教職希望の短期大学2年生と小学校教員(堀江・釜田,2016)に対して場面緘黙に対する知識・理解度調査が行われたことがあります。

本研究はまだ全文が公にされていませんが、掲載紙『立正大学臨床心理学研究』は(少なくとも私が調べた)過去の掲載論文について無料公開しており、今回の緘黙に関する研究もいずれ、オープンアクセスになると考えられます。

〇引用文献
堀江幸治・釜田穂奈美(2016). 小学校教員の場面緘黙児に対する理解と支援観についての質問紙調査 : 教職志望の短期大学生との比較から 九州女子大学紀要 52(2), 77-91.
英語表記:Horie, K., Kamata, H. (2016). Questionnaire study of the primary school teachers’ level ofthe understanding of the selective mutism and the attitudesabout the support for the children of selective mutism-The Comparison of the answers of primary school teachersand the junior college students in the teacher-training course-. Bulletin of Kyushu Women's University, 52(2), 77-91.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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